・離島の固有の生態系を保全するためには、環境、経済、社会が統合した持続可能な島に向けてのシステム作りが必要である。特に、生態系については閉鎖的環境であるため不可逆性が高く、外来種の影響は大きい。一方で、自然資源管理においては生物相互作用にも考慮する必要があり、離島における外来種対策においては「順応的管理」が重要である。しかし、さらに持続的な島に向けては、それを超えて住民参加、合意形成過程を入れ込んだ「順応的ガバナンス」にむけた法整備が課題である。
・そうした問題意識から、ペルーコロンビアの国立公園の外来種対策事例を研究機関、現地レンジャー等へのヒアリングを行い調査した。自然公園法、生物多様性保全の枠組みはどこの国においても共通のものであるが、市民参加の取組、レンジャー教育、ツアーガイドのあり方に大きな相違があり、制度を支える市民の協働のありかた、特に市民やツアーガイドに向けてのコミュニケーションをいかに図っていくかが大きなポイントであることが判明した。
・市民参加・コミュニケーションについては、ハワイの外来種対策事業の市民コミュニケーション実例などでもリーフレット等では限界があることについて関係者の認識は共通していた。最終年度においては、こうした課題を解決するためにSDGsを切り口に、市民と外来種問題について考えるアプローチを試みた。具体的には、2030年SDGsカードゲーム(イマココラボ作成)を用いて、「経済」「社会」「環境」が相互にかかわりあっていることをゲームを通じて実感してもらい、そのうえで小笠原のネズミをはじめとする外来種問題、世界遺産の価値を保全するために何ができるかを自分の問題として考えてもらった。小笠原諸島の父島で2回、小学校の教員、村役場向け、主婦子供向けに開催したがいずれもカードゲームの前後で問題に対する意識が大きく変わっていった。
|