本研究では、フィールドワークもとづき、地域のボランタリー組織(とくに漁民組織)の民族誌的分析を通して、ローカルコモンズ生成に深く寄与するこのような組織のあり方とその生成プロセスを分析することが目的である。今回の出張では科研の年次計画に従い、昨年度の積み残し課題とともに、本年度の計画(①ボランタリーな漁民組織の生成、②ローカルコモンズの生成・再編と地域社会にける正統性)として、以下の事柄について現地調査に基づいて明らかにしていくことを目的とした。 実際の調査では、調査期間が前回からまる1年空いてしまったことから、調査言語であるヒリガイノン語とアクラノン語の復習に一週間を費やした。調査地アルタバス町では、今回の漁民組織のターゲットを、同町に三つある漁民組織のうち活発な活動を行っているAltavs Small Fisherman’s Associationにしぼり、月例ミーティングへの参与観察と、参加者への個別の聞き取り調査を行った。またASFAメンバーとともに、湾内3か所のBitay(垂下式カキ養殖棚)を観察し、その形状と操業方法について現場で聞き取りを行った。さらに、継続的に世帯調査実施しているASFAメンバー宅を訪れ生業の複合状況とBitayの位置づけについて聞き取りを行った。現在、ASFAでは、初期のBitayの頒布のほか、マングローブ・リーバークルーズ用の筏の運用(本年5月開始)など、活動を多角化しつつある。 2019年3月の補充調査では、他2つの漁民組織活動との比較に立って、ASFAのローカルコモンズの生成の特徴についての考察を進める予定であったが、体調不良のために実施することができなかった。
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