研究課題/領域番号 |
16K00687
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
西村 一彦 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (00351081)
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研究分担者 |
金 志映 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター国際産業連関分析研究グループ, 研究員 (00760779)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 状態再現的代替弾力性 / アーミントン弾性 / 二国間貿易 / 貿易自由化 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実施計画にしたがい、多要素CES生産関数を二時点のコストシェアと価格変化から推定する方法を実装した。日本と韓国の400産業部門レベルの接続産業連関表から、二時点のコストシェア比および実質化デフレータをモニターし、コストシェア比の変化に価格比の変化を回帰することで、各産業部門の多要素CES生産関数の代替弾力性および生産性変化を推定した。両国とも約半数の部門について代替弾力性が有意に推定された。また、生産性変化はトランスログ関数の生産性変化と一致するトルンクビスト指数と相関があることがわかった。これらの代替弾力性を備えた静学的一般均衡モデルを実装し、外生的生産性ショックを与えた際の構造波及(採用技術の代替を伴う経済波及)効果を産業部門ごとに分析することが可能となった。 さらに、これら二国のモデルを、貿易モデルを通じて結合し、応用事例として二国間関税撤廃のシミュレーションを行った。貿易モデルにおける主要なパラメータであるアーミントン弾性(国産財と輸入財との間の代替弾力性)については、状態再現的代替弾力性(SRE)により計測を行った。SREは二時点の均衡状態(市場シェアと価格)を完全に再現可能なCES集計関数の代替弾力性であり、非生産的且つ入力が2つの場合に限り、二時点の観測値から一意に決定(カリブレート)できる。今回は、両国の接続産業連関表およびコムトレード貿易データを用い、両国ともに国内財と集計輸入財間、さらに集計輸入財の中の相手国財とその他国財間の二段階の階層別アーミントン弾性を計測した。関税撤廃シミュレーションを通じて、両国のGDPの変化や産業部門ごとの貿易構造の変化を、従来の方法と比べ詳細に定量的に捉えることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
状態再現的代替弾力性の計測および、それを応用した二国間の貿易モデルの実装は、当初の予定にはない成果である由。 日韓の貿易モデル実装についてはIDE報告書に詳細を報告した。 この報告書に基づいて論文を二件執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
モデルの動学化に不可欠な家計モデルの実装を敢行する。 家計モデルは、価格に対する財サービス購入行動とともに、労働供給および資本投資行動を伴う複雑なモデルである。 状態再現的アプローチを維持しつつ、必要最小限の要素を組み込んだモデルの定式化からはじめ、複雑化(現実描写)を段階的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はPCの購入に充てる予定だったが、所属期間の購入申し込み期限を過ぎてしまったため、購入に至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
PCおよびソフトウェア(統計処理ソフトSTATA)の購入に充てる。
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