主に次の研究をおこなった。 まず、昨年見合わせたフルーツ残渣を用いた養殖餌の開発を、マレーシア国プトラ大学と共同でおこなった。産廃としてのフルーツ残渣を養殖餌に活用できれば、環境問題を緩和しつつ、地域振興を推進できる。マレーシアにおける高級魚の1つであるMahseerの養殖を想定し、①ココナッツ、②③パイナップルの皮と冠芽、④⑤パラミツの皮と果実の5つを含めた5タイプの残滓餌を開発した。いずれも、3地域から入手して、フルーツの種類・部位5タイプ×産地3地域の15の残滓餌を比較した。Mahseerの生育に必要な栄養を必要最低量以上含むようにしたうえで、フルーツを含まない場合の通常餌をベースラインとしてコストを比較した。その結果、15の残滓餌中5つがコスト面で通常餌よりも優位にあった。ただし、15の残滓餌・通常餌のコスト差はわずかであった。そのため、フルーツ残渣餌のコスト面での明確な優位性は示せなかったものの、実用可能性は十分にあることがわかった。 次に、過年度におこなった都市部に出没する海洋哺乳動物に対する市民の支払意志額が、その海洋哺乳動物が野生個体であるか飼育個体であるかによって異なるか、という環境評価の結果を取りまとめ、学会で報告し、論文として公表した。 最後に、野生動物の保全にあたって、個体数の調整と、捕獲個体の有効活用が必要であることから、伸び悩む捕獲個体の有効活用を進める方策としてのブランドづくりと、その際に留意すべき点を整理して学会報告をおこなった。その内容は、プロシーディングとして公表予定である。
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