本研究は、低炭素社会における物流・ロジスティクスの環境経済学・政策論の理論構築と政策提言を目的に実施した。 物流・ロジスティクスはサプライチェーン全体に関わり、産業横断的にGHGの排出・削減との結びつきを整理する必要がある。Mckinnon(2018)は、「茅恒等式」をベースに物流・ロジスティクスのGHG排出量を捉える5つの視点を提示した。これらに実際の活動をあてはめると、多くが荷主企業の意思決定に依存し、輸送技術の発展・制約に係るものが続き、物流事業者が選択可能な取組みは多くならなかった。 荷主の物流・ロジスティクスのGHG排出責任については、日本が省エネ法でエネルギー効率の改善を求めているのみで、他国で制度化されたものはなかった。ただし、蘭本部のNPOが、ロジスティクスのGHG排出量算定・報告の基準として「GLEC Framework」を公表しており、GHG ProtocolやCDP等と連携して国際標準化を目指していることが分かった。 他方、技術開発については、これまで陸上貨物輸送の主エネルギー源である軽油に代替するものがほぼなかったが、本研究開始と同時期に大型トラックの電動化の見通しが立ってきた。とくに、高速道路に架線を敷設しパンタグラフから給電するものは、再生可能電力の普及と併せて長距離トラックの軽油消費の大部分を代替可能なことが分析できた。 以上より、意思決定している荷主に物流・ロジスティクスの排出削減を誘引づけ、国際標準によって算定法や削減効果を明確に把握させられる制度的枠組みの調和が求められる。さらに、トラックの電動化と再エネ利用に関しては、インフラ整備へのサポートおよびその利用への動機づけを政策的に進める必要性が導出された。 今後は、国際標準のあり方と国内制度での対応、および具体的な排出削減への戦略と政策に係る研究・提言が必要となってくる。
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