研究実績の概要 |
国内の伝統工芸の核となる技術的な「特長」を産業化の視点から抽出する手法を確立し、それらをアーカイブ化するためのフォーマットの提示と内容を持続的に拡充するための更新の仕組みを提案することが、申請書に記載した本研究の目的である。最終年度では、これまでの、福岡県八女市にある八女福島仏壇、八女灯籠、八女提灯における調査と実践から導き出した3つの「型」の概念と分類(shape, pattern, style)の考察に基づき、さらに明確に「型」の特徴をもつ染色の型紙に焦点を当てて、型紙を具体的な対象とし、産業化を視野にいれたアーカイブのプロトタイプを制作した。 具体的にはウェブ上で機能するアーカイブを試作し、産業化を支援する目的から、データを「つくり手(producer)」「つたえ手(distributor)」に分け、さらに「つくり手」の下には、「生産者」「生産者組合」「取り組み」の3つの小分類、「つたえ手」の下には「問屋」「店舗」「ミュージアム」の3つの小分類を置き、ほかに伝統工芸を次世代につなげるための「教育」と、産業化を支援する理論的背景として、ケーススタディや調査、研究などの内容を含む「ショーケース」の項目を設け、情報を蓄積できるようにした。また、このアーカイブでは、リストやカード形式での可視化だけでなく、情報を地図上に表示できるようにした。地図上で俯瞰してみることで、データの相互関連を地理的な要因と結び付けて解釈できる。 昨年度までの研究成果において、製品デザインを発想する際のヒントを見出す段階での有用性は確認できたが、産業化という視点での貢献については不十分であったことを受け、最終年度では産業化に寄与するアーカイブを目指し、また産業化を視野に入れるという当初の目的に照らし、伝統工芸の今後に次の一手を投じる戦略を検討する際に参照できるアーカイブの指針を示した。
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