研究課題/領域番号 |
16K00720
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
市原 恭代 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (10301813)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 色覚 / カラーユニバーサルデザイン / 色覚バリアフリー |
研究実績の概要 |
災害下においては一人の人間も逃げ遅れることなく避難するよう誘導すべきである。そのためのデザインは万人に共通したサインを送ることを要求される。しかし、人間の色の感じ方は一様ではない。遺伝子のタイプの違いによって色の見え方が異なる人が日本には300 万人以上存在する。ヒトの色覚に多様性があることはあまり知られておらず、そのために起きる社会の諸問題は解決されていない。とりわけ色分けされた防災地図において、適切な色が使われていないと生命の危険さえある重要な場面で誤情報伝達が起きる可能性がある。この研究では、従来色弱と呼ばれてきた日本の男性5 パーセントを占める赤と緑を混同するタイプの色覚の人々をも配慮して、全ての人に誤情報が伝わらないようなカラーユニバーサルデザインを実際に設計・提案している。 これらの基礎研究の結果を生かし、2004年にNPO 法人カラーユニバーサルデザイン機構を立ち上げに協力し現在は理事を務めている。Color Universal Design Organization (カラーユニバーサルデザイン機構)、略称CUDO (クドー) は、社会の色彩環境を多様な色覚を持つさまざまな人々にとって使いやすいものに改善してゆくことで、「人にやさしい社会づくり」をめざすNPO 法人である。その結果、色覚バリアフリー/カラーユニバーサルデザインへの配慮を啓発する活動は科学界の外へも広がり、色彩学者、デザイナー、色弱者団体の関係者らがこの活動に賛同して、具体的にどのようなデザインが見分けにくいのか、そのデザインをどう変えれば見分けやすくなるのか相談を依頼してくる企業、自治体、団体等に対して、科学的で実用的なデザインが生まれることとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この分野の研究は色彩デザインの研究ではほとんど研究されていない,ヒトの色覚の多様性における分光感度と色カテゴリーの範囲を求めるという研究である。その学術的な特色はヒトの色覚の特性を明らかにするものであり、その意義は大きく、また発展的応用研究も多く見込まれる。日本には長い間、先進諸国のどこでも試行していない石原式色覚検査表による色覚異常者のふるいわけを行い、彼ら,彼女らに対して実質的なその能力があることを調べることさえなしに、進学制限や職種制限を行ってきたという、人権にかかわる差別をしてきた苦い経験がある。 反面、色覚検査表の制作技術は世界のトップレベルにあり、カラーユニバーサルデザインは、このような経緯をたどった日本だからこそ生まれたものであり、現在さらに深く詳細に研究されるべきものである。デジタル教科書においては国際的にも未踏野であり、この研究はヒトの色覚の多様性を踏まえて実際のデザインの現場にカラーユニバーサルデザインを行っていくための基礎研究である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在防災地図のハザードマップを分析し、再デザイン中である。本実験の目的はカラーユニバーサルデザインを利用して津波のハザードマップを,一般色覚者にも色弱者にも正しく情報が伝わる,また「危険である範囲」をすべての人が直感的に分かるデザインに改善する事である.実験1,3の実験結果から,本実験の改善内容は,一般色覚者にも色弱者にも正しく情報が伝わるデザインとして,有用という結果になった.しかし,「危険である範囲」を直感的に分かるような色ににする改善内容は,完全とはいえず、改善前に比べ,やや改善された結果となった. 今後の課題 「危険である範囲」を直感的により感じ取れる手法を考案する事である. ・新たにハッチングの種類を増やして選出する. ・配色の色を一般色覚者と色弱者にアンケートにより評価して,配色の選考に利用する. 上記の2つの案が現段階では,有用ではないかと考える.
|
次年度使用額が生じた理由 |
被験者に欠席にあったことによる残金
|
次年度使用額の使用計画 |
次回実験にて速やかに消化
|