従来の研究に引き続き色覚の多様性を研究している。色覚多数派と少数派の色に対する印象の違い 及び 色覚特性別の記憶色の差異に関する研究を行った。 イチゴといえば赤,バナナといえば黄のようによく知った対象物の名称から一般的に色を思い出された色を記憶色という.一般的に,記憶色は実際の色と比較して色相が変化し,明度と彩度は上昇する傾向がある.そのために写真や印刷物,テレビなどではよりよく見せるためにこの記憶色を用いた色再現が行われている.しかし,人の色覚は多様であり,記憶色にも変化が現れると考えられる.過去の記憶色の研究では,色覚の多様性を考慮したものはほとんど見受けられない.そこで本研究では,色覚特性別の記憶色の差異を知るために,記憶色と実際の色のズレを数量化し,対象物の特徴によって生じるズレの傾向を求めた. [被験者]1群:一般色覚者(石原表Pass) 20代の男女10名:2群:P型色覚者 20~60代の男性11名:3群:D型色覚者 30~60代の男性8名 NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構の表記に従い1型色覚をP型,2型色覚をD型と称する. 本研究では,一般色覚者,P型色覚者,D型色覚者を対象に記憶色の差異に関する調査を行った.今回の結果として低彩度の対象物の記憶色は色相が安定せず,ほとんどの対象物において明度及び彩度は上昇することがわかった.P型,D型色覚者においては混同する色の対象物は色相のばらつきが大きくなり,彩度の上昇度合いは一般色覚者よりも大きくなることわかった.
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