本研究は、芸術系学科における医療連携プロジェクト授業の設計・実施を通じて、デザインと医療が連携するPBLタイプの授業にワークショップを利用する手法のモデル化を目的としている。具体的には次の4項目を対象に展開した。 (1)喘息が疑われる患者に対する初診時の診療と吸入療法の指導プロセスの可視化、(2)同プロセスを対象とした観察ワークショップの設計・実施・評価、(3)観察ワークショップでの結果に基づいて導出された課題に対する、解決策をデザインするためのアイデア展開ワークショップの設計・実施・評価、(4)アイデア展開ワークショップの成果物として、現場で利用できるプロトタイプの制作。 (1)については、2016年度に呼吸器内科クリニックと調剤薬局の協力を得て教員が模擬受診を行い、カスタマージャーニーマップを制作した。 (2)(3)については、2016~2018年度に医師・薬剤師の協力を得て、学生が模擬受診を行う形でそれぞれ3~4回に渡って実施し、少しずつ改良を試みた。 (4)の成果物については、2016年度は進級制作展で展示して専門家の評価を受け、2017年度は授業プロセスとデザイン提案を冊子の形にして発表し、2018年度は現場で試用できる動画や印刷物を制作した。 当初の目的である「ワークショップを利用した医療連携プロジェクトのモデル化」に関してはまだまだ研究途中であるが、現時点での成果として次の2点を中心にまとめた。(1)参加学生に対して当事者意識を涵養しモチベーションを上げる手法を中心に、ワークシートを制作して、観察ワークショップのモデル化を提案した。(2)参加学生の準備性の違い(それまでの授業でデザイン思考に触れた経験の有無、医療に対する日常的な課題意識、提案したいツールの制作スキルなど)によって授業展開を変更する必要性に気づき、対処方法を考察した。
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