研究課題/領域番号 |
16K00729
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
木多 彩子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90330357)
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研究分担者 |
本多 友常 摂南大学, 理工学部, 教授 (20304181) [辞退]
飯田 匡 大阪大学, 工学研究科, 講師 (40335378)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | デザイン初学者 / 教育 / 構造計画 / 公共施設 / 複合化 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、優れた公共建築を市民と共創するために市民側のに求められる予備知識の明確化を目的に、デザイン初学者に三次元思考力を習得させるための基礎造形教育の効果を、専門学校学生の作品の変化の追跡調査から検討した。美しさの比率の理解は比較的すすみやすいが、力の流れや荷重点の理解は難しいことが明らかになった。 また、平成28年から引き続き建築初学者を対象とした公共建築設計コンペを題材に、特に構造計画に焦点をあててデータ分析を行った。具体的には大阪府主催「あすなろ夢建築コンペ」の平成26年・28年(いずれも用途は集会所)の入選作品を対象とし、設計主旨文と個々の作品の審査員による講評文を文節化してコンペ募集要項に明示されている評価項目を指標に特徴と明らかにした。また入選案における構造形式の特徴を明らかにした上で、最優秀案の実際の建設時に生じた構造上の変更点との差異を示し、初学者指導上の課題を検討した。 さらに、公共建築立て替え時のニーズ把握の一助として、役割が見直されつつある公民館が、公共施設の再編の流れの中で、他用途との複合化などによって相乗効果が図れるのではないかという考えのもと、他の公共施設と複合あるいは隣接している公民館の空間構成を明らかにする研究に取り組んだ。結果として、公民館と複合化しやすい用途は教育系と文化系で、隣接化しやすい用途は教育系と役場系であり、大阪府下 3 市の公民館の多くは、共用施設が入口にとどまり複合化あるいは隣接化による空間的な融合が図られていないことが明らかになった。これより多用な複合化や隣接化による相乗効果も含めた評価手法と、それに対する市民の理解が今後求められていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、研究分担者の本多友常(摂南大学)が定年退官前の最終年度であり、諸藩の事情から本研究の活動に従事することができなかった。そのため、本多を中心に平成29年度に予定していた公共建築の市民共創にたいする専門家へのヒアリング調査が、未着手になっている。 また、初年度の平成28年度から継続する研究を進める中で、対象とする市民をワークショップなどに参加意向をもつ、建築に興味のある市民と位置づけ、デザイン初学者向けのプログラムを中心に検討することが、本研究の目的に近づくために重要であることが明らかになってきた。そこで本年度は、初学者向けの教育手法の検討を、申請当初よりも1課題多く取り組んだため、上記の本多の担当部分を代替補助する人員を確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は平成29年度の遅れをとり戻すために、アルバイトを雇い研究体制を立て直す。その上で、平成29年度から引く続き、市民から建築初学者を対象とした実験により知識醸成の過程を明確化する。特に平成30年度は、建築知識理解の基礎となる図面の読み取り力に特化して、その涵養過程を建築系科目の学習時間や内容と関連させて数値化する。これは、当初の研究計画には予定していなかった実験であるが、昨年度までの2年間による研究成果から、公共建築の市民共創のためには、いかに建築の専門的な知識を市民に負担なく過不足なく伝え教えるのかが最重要であるという認識から、研究計画に変更を加えた。 昨年度に予定していた専門家へのヒアリングについては、現在、海外を含む複数の資料から対象者を選定している。決定次第、順次進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は研究分担者の本多友常が定年退官前最終年で、諸藩の事情から本研究に携わることができず、したがってその研究費が使われず、合わせて研究に遅れが生じた。 平成30年度は年間を通してアルバイトを雇用し、研究体制の立て直しを図りたい。 また平成29年度まで2年間の研究成果より当初の研究計画に変更が生じ、平成30年度には新たに図面読み取り力に関する実験を予定しており、そのための経費として利用する計画である。
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