緊急情報を迅速に伝達するためにテレビ番組中に流れる速報は,視聴者のテレビ番組の見方やその内容の受け取り方に影響を与える可能性がある。本研究は,視聴者の視点を取り入れた情報表示のためのテレビ画面デザインを考察することを目的とし,L字型画面を対象とした以下(1)(2)の実験と調査を行った。本年度は研究成果の総合的な取りまとめと論文発表を行う準備を進めた。 (1)実験では,速報などの文字情報表示が視聴者の番組・映像コンテンツに対する視線と印象感受に及ぼす影響を検討した。その結果,L字型画面は観察者の映像コンテンツに対する一停留時間の分布を変え,通常の画面で映像を観察するよりも,長い停留時間の注視頻度が減少し,映像観察の総停留時間が短縮することが示された.また,SD法によって抽出した映像の印象のうち特定の次元において,その印象度がL字型画面での観察時に変化することも確認された。 (2)調査では,評価グリッド法を用いてL字型画面に対する視聴者のニーズを定性的に把握し,ニーズを満たすためのデザイン要素を検討した。その結果,テレビ視聴者は,情報表示画面に対して「速報情報の受容しやすさ」だけでなく,「映像コンテンツの継続的な鑑賞を邪魔されないこと」等,複数のニーズを持つことが示された。また,調査対象者の回答に基づいて,視聴者ニーズを個々に満たすデザイン要素について色彩や画面形態等の観点から検討した。 以上の結果を踏まえ,視聴者利益との調和をはかる情報表示画面デザインについて考察した。これらの成果は,テレビ視聴者の感性に与える影響に配慮し,視聴者にとって望ましい画面デザインの指針として役立つと考えられる。
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