研究課題/領域番号 |
16K00737
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研究機関 | 兵庫県立工業技術センター |
研究代表者 |
後藤 泰徳 兵庫県立工業技術センター, その他部局等, 上席研究員 (70470242)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モーションキャプチャー / 歩行 / ロコモティブシンドローム |
研究実績の概要 |
近年、「ロコモティブシンドローム=運動器の障害による要介護の状態や要介護のリスクの高い状態」が問題とされるようになり、そのなかでも、「歩行」の機能低下が生活機能の低下を招くと言われている。予防のためには、後期高齢者の歩行データ収集が有意義であり、これまで収集が困難であった後期高齢者の歩行データの蓄積が進むことで、歩行特性の分析が進み、後期高齢者の生活環境改善のためのガイドラインのような設計指針の構築が可能になるばかりでなく、高齢者自身も歩行特性をよく知ることで予防が可能になり、QOLの向上を図ることができる。健康的な生活をおくる上で、歩行は欠かせない動作の一つであるが、近年、高齢化社会が進み、特に後期高齢者の筋肉減少等に起因する歩行障害が日常生活動作能力の低下につながることが指摘されるようになった。現状のモーションキャプチャー(マーカの反射光から位置計測するシステム等)は、リアルな動きをデータとして取ることができるものの、基本的に実験環境の整ったラボで行うこと前提としている。そのため、ほとんどの三次元動作データは比較的若い健常者のものである。後期高齢者の歩行データを収集するためには、実験者が、比較的集まりやすい居住地域の福祉施設やコミュニティセンターなどに出向き、行えるようにすることが望ましい。その実現のためには、①実験機器を携行できるようにすること、②着衣の上からでも測定機器を装着できること、③限られた時間で、複数の被験者のデータ収集が可能なこと、④計測データをラボに通信により集積すること…が必要である。そこで、関節計測モジュールと通信システム(平成25~27年度科研費研究で開発)を改良し、新たに開発する動線追跡機能と組み合わせ、実験者が携行し、着衣の上からでも装着でき、携帯端末を活用することで、複数被験者のデータ収集を可能にするシステムをデザインを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
携行型歩行動作動線追跡システムは、福祉施設や公民館などラボ以外の場所で、人間工学的な動作や動線データを携帯端末により効率的に収集するために、動線計測装置を置き、あらかじめ複数の動作計測装置を被験者に装着してもらい、データ・ログには携帯端末を使用し、携帯端末をバトンリレーしていき、ラボに送信するという使用状況を想定している。下肢関節角度計測に関しては、屋外対応型ウエアラブルモーションキャプチャシステムのデザイン(平成25年度科学研究事業費)」で開発したシステム(煙草ケース大の通信基板から、32関節角度の遷移データをBluetooth通信経由で、スマートフォンやタブレットに送りデータ・ログ可能)をベースとして開発する。そのためには、スマートフォンで取得したデータをサーバ上のDB(データベース)に集積可能にするために、通信環境の構築が必要となる。そこで、まずスマートフォンとサーバによって構成される通信ネットワーク環境を構築した。構築したシステムの大まかな流れを、「スマホで下肢の関節角度計測→ホスティンサーバに送信→ホスティンサーバ経由で工業技術センターのローカルサーバ上へ」とした。以上の通信環境を整えたことにより、次年度で開発予定の計測アプリに通信機能を付加することで、計測データの集積ができるようになった。各関節に、回転角度の遷移を検出する関節計測モジュールを配置した歩行動作入力装置のデザインに関しては、基本的に被験者の下肢に対し、負担軽減を図るため、通常の衣服の上からの着衣方式を想定したコンセプトデザインを終え、次年度以降にRP(ラピッドプロトタイピング)装置を活用し、実際のプロトタイプを制作したい。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は全体の研究開発の基礎を固める必要があることから、通信ネットワークの構築を優先させた。また、関節角度計測に関しては、すでに技術的基盤があるので、今年度は動線計測の方式を中心に検討を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
通信ネットワーク構築を優先し、動線計測の方式検討や試作開発を次年度執行予定に変更した。その分が開発経費を繰り越して使用することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
動線計測装置およびアプリ試作開発に使用予定。
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