研究課題/領域番号 |
16K00739
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
石垣 和恵 山形大学, 地域教育文化学部, 講師 (20748941)
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研究分担者 |
村山 良之 山形大学, 大学院教育実践研究科, 教授 (10210072)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 家庭科教育 / 防災 / 高等学校 / 中学校 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、防災の視点を取り入れた家庭科教育プログラム作成のために基礎データ分析とその結果に基づく教育プログラム開発ならびに高等学校での授業研究を行った。 教育プログラム開発のための基礎データ収集のために実施した山形県内の中学校並びに高等学校対象の「学校における防災教育の現状調査」により、明らかになったのは以下の通りである。まず、家庭科教師が学習内容で重視している領域は、中学校・高校ともに食生活が最も高く、高校は次いで家族・家庭生活が約6割であった。また、防災の視点を取り入れた学習の中学校実施率は約8割でその多くが住生活での学習だった。高校実施率は約7割で、多くは住生活だが食生活や他領域も少数だが実施例があり中学校に比べて多様な授業がみられた。 そこで、防災の視点を取り入れた教育プログラムの開発は、食生活領域と家族・家庭生活領域に防災の視点を盛り込むこととした。具体的には平成28年度に大学生を対象として実施した学習内容を高校生向けに改良し、高校における3時間の授業案を編成した。その内容は、①自然災害発生時の対応と被災後の生活とその課題,②避難所生活簡易体験から考える人の多様性と共生社会,③災害時の食事とローリングストック法を用いた食料備蓄計画である。平成29年度は山形県内の高等学校1校から承諾を得て、1学年11クラスで授業実施と授業前後の意識調査を実施した。提案した教育プログラム実施により、生徒の受講後の防災に関する知識の理解が高まったといえる。中でも「非常食の条件」の理解度が最も高かった。しかし、家庭で備蓄を行っている生徒は学習後も全体の約3割にとどまり、危機意識を防災行動につなげることの難しさが示唆された。今後、行動化を促進するような教育プログラムへの改良が課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、防災の視点を取り入れた家庭科教育プログラム作成のための基礎データ収集・分析と教材開発を計画し、以下のように実施した。 1)教育プログラム作成のための基礎データ収集を目的とした防災の視点を取り入れた家庭科学習の実施状況調査は分析を終え、日本家庭科教育学会例会で発表した。同時に実施した学校防災の現状調査は日本家政学会にて発表予定である。 2)防災の視点を取り入れた授業実践者へのインタビュー調査と生徒の学習効果の検証を計画したが、計画通りの実施には至っていない。遅れた理由は、1)の調査実施が当初予定より半年ほど遅くなり、その結果を反映させて作成する教育プログラム開発が遅くなったことによる。また、教育プログラムの提案が年度途中となったために、授業協力校の確保が高校1校に留まった。平成30年度は改善した教育プログラムの提案を行い、授業協力校を増やして、教育プログラムの改善ならびに普及を行う。なお、教員養成学部学生を対象とした授業は継続し、高校生向け実施のための参考とする予定である。 3)授業実践者へのインタビュー調査は高校2校から協力を得ることができた。平成30年度は中学校での授業実践者のインタビュー調査を実施予定である。 4)学習の動機づけとなる視聴覚教材等作成を計画していたが、防災の視点を取り上げて家庭科の学習を単元編成するにあたり災害発生時の状況を映像で視聴する時間を確保・設定することは難しいと判断し、被災状況ならびに避難所生活風景の写真の提示に留めた教材とすることとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、以下のように進める。 第一に、教育プログラム原案(平成29年度実施)に基づく授業実践の教育効果検証により教育プログラムの評価・修正を行う。①平成29年度実施により改良を行った修正教育プログラムの有効性を検証するため、研究協力校に教育プログラムによる授業を実施してもらう。②質問紙調査により生徒対象に「家庭科学習前後の意識と実態調査」を行い、授業前後の防災に対する意識と実態、生活技能自己評価、生活に関する知識・技能習得意欲、家庭科学習意欲を明らかにする。③対照校として、本教育プログラムを実施しない学校でも「家庭科学習前後の意識と実態調査」を実施する。ただし、対照校として調査に協力をする学校が得られない場合は、比較検証は行わない。それらの結果により、再度、教育プログラムの評価・修正を行い、ブラッシュアップを図る。平成29年度は授業協力校が1校に限られた。今後、協力校を確保する方策としては、山形県教育センター主催の家庭科関連研修会(10月予定)ならびに筆者が担当する教員免許状更新講習(8月予定)受講者に指導例として提示することを予定している。また、授業協力が得られない場合でも、教育プログラムを提示して意見を聞き、教育プログラムの評価・修正を行う参考にする。 第二に、家庭科主任対象調査(平成28年度に実施)により把握した防災の視点を取り入れた授業を実践している家庭科教員を対象に、授業詳細についてインタビュー調査を実施しその学習指導を指導案として記録する。平成30年度は、特に中学校の授業事例の収集に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)教育プログラムの効果を検証する目的でビデオカメラ購入予定である。平成29年度の授業協力校ではビデオ撮影の承認が得られなかったためまだ購入していない。 2)開発した教育プログラムの情報発信の方策としてホームページ作成を予定している。
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