研究実績の概要 |
本研究では、対話を中心とする組織変革理論であるAppreciative Inquiry(AI: Whitney & Trosten-Bloom, 2002, 2010)をアプローチとして、保育・教育職として必要な省察力・問題解決力の育成に最適化した資質向上プログラムを構築することを目的とした。本年度の主な成果を以下に示す。 1)AIミニインタビューに基づく実習の振り返りを行なうプログラムの作成および改善のため、3週にわたる実習指導で実践を行ない、大学生95名を対象に効果検証を行った。その結果、参加後には保育者省察尺度に向上が見られたほか、自己評価と協同作業意識との関連も認められた(利根川ら,2018)。また、短大女子16人を対象に2週にわたって実践を行った結果では、保育者省察尺度のうち保育者自身に関する省察で事後の得点が上昇した一方、子どもに関する省察と他者との交流を通した省察では実施後の得点が低下した(織田ら,2018) 2)養成段階における専門職としての就業イメージ理解を促すため、キャリアシミュレーションプログラム(労働政策研究・研修機構,2011)を基にした独自の教育プログラムを開発し、学生が実践の中で記入した記録を元に効果検証を行なった。その結果、職業未決定尺度(下山,1986)では職業意識が明確になる方向と、決定を留保しようとする方向と、相反する傾向が認められ、この背景として学生が卒業後に継続して働きたいと考えている年数が影響していることが示唆された(三浦ら,2018)。また、学生が生成した「卒後10年の出来事」の記述を見ると、全体として生活よりも業務の記述が多いものの、後半では生活関連の記述も増えることが示され、また保育職を自らの仕事として継続しようとする記述傾向があることが示された(上村ら,2018)
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