研究実績の概要 |
本研究では、対話を中心とする組織変革理論であるAppreciative Inquiry (AI: Whitney & Trosten-Bloom, 2002, 2010)をアプローチとして、保育・教育職として必要な省察力・問題解決力の育成に最適化した資質向上プログラムを構築することを目的とした。本年度の主な成果を以下に示す。 1)AIミニ・インタビューを用いた実習指導プログラムについて,複数回における授業実践を行い,最終的に提案するプログラムの具体的な実施方法と実施内容について検討した。生成されたストーリーと課題の他,参加者を対象として自己評価,プログラムの改善点等を調査した。その結果,自己評価は総じて高く,グループ対話で生成されるキーワードも肯定的な内容が多かったことが見出され,最終的に提案できるプログラムとして一定の成果があったと考えられる(利根川ら,2019)。 2)養成施設に学ぶ学生に対し,2年間5回の実習の振り返りにおいてAIミニ・インタビューを取り入れた授業を行なった。その結果,保育者省察尺度については、事後値が低い尺度と、事後値が高い尺度の両傾向が示された。共同作業認識尺度による事後評価では,協同効用の項目で割合が高く示された。(織田ら,2020)。 3)保育の質の向上に向けた園内研修のICT支援システム開発を行ない,実際に保育施設に介入を行って対話型園内研修での有効性を検証することを目的に,幼稚園1園を対象として年間を通した園内研修のフィールド観察を行ない、ICT導入以前の段階での研修の実態と課題を明らかにした。その結果,①発表準備,②資料の保存と再活用,③職員間のコミュニケーションの確保、④情報セキュリティ,の4点に課題があることが示され、省察力・問題解決力の育成プログラムにおけるICTの活用が示唆された(音山ら,2020)。
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