研究課題
石巻市内では、壊滅しなかった学校はすべて避難所となった。避難所運営に関わった教員にインタビューをするとともに、震災後にリニューアルされた学校防災マニュアルを比較検討した結果、避難所運営の経験がマニュアルに反映されていることが明らかとなった。第1に、すべての学校防災マニュアルに避難所運営が記載された。第2に、学校毎に記載内容に相違があった。長期の避難所運営をした学校では、避難所開設の初動時の配慮点、避難所長期化への対応、学校再開までの流れなど詳細な記載がなされていた。第3に、提供する場所、管理方法が記載された。体育館だけでなく教室や特別教室使用の判断にせまられた経験が反映されたといえる。第4に、避難所運営の主体は市職員並びに住民と明記された一方、学校側の管理職、教員職員の役割も記載されていた。避難所運営は市職員と制度化されていたが、職員は役所に閉じ込められ運営に当たったのは1週間程後で、今回の避難所開設・運営は教職員が中心になったが、「原則として、全教職員、自分の身の安全を優先する」と記載され、教職員の過重な負担への配慮がみられた。とはいえ実際には教職員が中心になりがちであることから、運営上の配慮事項(高齢避難者の居場所の確保、備蓄物資の配給、災害弱者優先の配給など)や、一般教員は震度6弱以上、管理職等は震度5弱で、勤務時間外でも避難所運営にあたると記載された。第5に報道機関への対応も書かれていた。様々な取材が頻繁に行われた負担と混乱を回避するため、対応は校長、副校長に絞った経験が反映されていた。第6に、震災直後の混乱や長期避難所運営の経験を活かし、「児童・生徒の保護者引き渡しは、津波警報解除等の公的発表による安全確認時まで避難場所で待機」「非常時の指示系統は、校長、教頭、防災主任等の順」「長期間の避難所運営の際の住民自治への移行について」が書かれた。
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