本研究の目的は、幼児期の子どもの生活習慣が親の社会経済的環境によってどのような影響を受けているのかを明らかにすることであった。最終年度は、これまで行った量的及び質的調査のまとめを行い、関係機関に向けて報告を行った。 本研究で明らかになった知見、すなわち幼児の生活習慣が親の就業環境によって規定されること、具体的には母親の帰宅時間の遅さは、子どもの就寝時刻の遅れや夜間の睡眠時間の短さにつながるとした仮説が支持された。この結果をふまえると、幼児期にある子どもの生活習慣形成を支援するベクトルとして、親に対する教育的支援を重視するベクトル、親の育児時間を保障するための雇用環境整備に向けたベクトル、社会や家庭におけるジェンダーエイクティに向けたベクトルという3方向の社会的支援の必要性が提起された。 一方、本研究で母親の帰宅時間の遅さは、子どもの食習慣には影響を及ぼさないことが示されたことから、子どもの食習慣の形成には親に対する教育的支援の必要性が提起された。そこで、幼児の睡眠習慣及び食習慣の改善に向けて、地域社会での取り組みを明確化するために、アメリカで取り組んでいる親支援プログラム(Family nutrition program) に着目した。アメリカの実践プログラムから、わが国における親に対する教育的支援のあり方についての具体的示唆を得ることができ、地域社会で子どもと家族をサポートすることで、すべての子どもが健康に暮らす方途を総合的に考察した。
|