放課後児童クラブでは、同一空間で多様な生活行為が行われることによる喧噪感が問題となっており、高学年児童や障害児の受け入れも考慮した、音環境整備や落ち着ける空間の確保が必要である。本研究は、留守家庭児童の第二の「生活の場」である放課後児童クラブ(学童保育所)を、落ち着いて生活できるような場所とするために、①ハード面の対策として、生活行為と音環境整備の双方を考慮した小空間形成による改善策の現地実施とその効果の検証を行い、さらに②ソフト面のアプローチとして、児童に対する「生活と音」活動プログラムの開発・実施・検証を行うことを目的としている。 平成30年度は、以下の研究を実施した。 (1)小空間形成による改善効果を検証するために、平成28年度現地調査の分析・考察を進め、一室型の施設に小空間を設置した場合の低・高学年児童の過ごし方の特徴と課題を明らかにした。(2)児童や支援員が手作り可能な、吸音ファブリックパネル及び吸音パーテーションを考案し、放課後児童クラブの室を想定した教室にパネルやパーテーションを用いた小空間を設置して残響時間を測定し、音環境改善の効果を確認した。 また、補助事業期間全体を通して、以下の研究成果が得られた。 (1)ハード面の対策として提案した小空間設置については、多様な生活行為の混在や過密化を回避し落ち着ける空間の確保につながること、また、吸音パーテーションは、生活行為の混在を回避する役割とともに、吸音ファブリックパネルとの併用により、残響時間の低減等の音環境改善効果が確認された。本提案は、既存施設の環境整備および新築時の設計指針に活かすことができると言える。(2)ソフト面からのアプローチとして、児童向けの「生活と音」活動プログラムを3点開発した。児童の自然な声や音の発生を過剰に制限することなく、日常生活で発生する音と上手につきあう方法を学ぶ教育的効果が期待できる。
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