1966年からの長期反復調査「家族変動・勝沼調査」の対象世帯に対し、2018年2-4月に実施した追跡調査の結果を2018年8月に第6回アジア農村社会学会大会で報告し、論文にして『十文字学園女子大学紀要』49号へ投稿した。分析対象は1966年調査時に親夫婦・子夫婦揃いの直系家族世帯で、子夫婦の夫が1921-35年生(1966年31-45歳、2018年83-97歳)の107世帯である。2018年4月末現在、60世帯は直系家族再生産可能なステージにありながらも、直系家族世帯は35に留まり、他は世代間で別居していた。子夫婦の夫は男系に限定されていたが、11世帯では子夫婦の娘が家業継承していた。ぶどう作の収益性向上により、子夫婦の娘が農地相続してその夫が経営継承する例や、子夫婦の孫娘が初職として農業を選択する例も現れていた。 近年、わが国では女性農業者の活躍が注目されている。しかし、女性農業者と農村女性とは同じではない。2005年農業改良助長法改正による生活改良普及員制度の廃止は、農村女性リーダー育成プログラムが農村女性の地域グループ活動から女性農業者の広域ネットワーキングへ転換する契機になったことを2018年9月に第28回オーストリア農業経済学会年会で報告した。その事例研究として、甲州市勝沼町における農村女性リーダーおよび農村女性起業家を対象に2018年8月から12月にかけてインタビューと観察調査を実施し、その成果を2019年1月に十文字学園女子大学公開講座「女性のポテンシャルで叶える六次産業化と地域づくり」としてアウトリーチした。勝沼町では2002年3月の男女共同参画推進計画策定を契機に女性のリーダーシップが醸成され、2005年11月市町村合併による甲州市発足によって新たな地域づくりの動きが高まる。そこで生まれた農村女性起業は個人経営でもコミュニティ・ビジネスの要素を含んでいた。
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