研究課題/領域番号 |
16K00763
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
向井 美穂 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (40554639)
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研究分担者 |
井上 知香 常葉大学短期大学部, その他部局等, 講師 (80710540)
上垣内 伸子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (90185984)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 対話と傾聴 / 親の主体性 / 子育て・子育ち支援 / ネウボラナース / ネウボラ / フィンランド / 多職種連携 / 支援者の専門性 |
研究実績の概要 |
平成30年度は①フィンランド・ネウボラ調査から示唆される親の主体性を育む子育て支援の条件を日本にいかす為の支援モデルの作成②フィンランドの最新の取りくみの調査③結果の整理と分析④研究総括の4点を計画していた。 ①に関して、平成29年度に開催した国際シンポジウム(埼玉・静岡での開催)の記録をまとめ、親の主体的子育てを可能にする要因について日本の専門職の意見も含めて、分析を行った。さらに、平成28年度に実施したネウボラでの現地調査で得られたデータも併せて、日本の子育ち・子育て支援に必要とされる専門性及び実践可能な支援姿勢について検討を重ねた。必要に応じて、国際シンポジウムの招致講演者でもある2名のネウボラナースと連携をとりながら、継続した。その過程の中で、再度ネウボラでの観察調査を行い、ネウボラナースの「傾聴と対話」の基本姿勢を3人の研究者が共通の視点で捉えなおすことで、より質的に高い支援モデルの構築を目指すこととした。その為、ネウボラナース自身に自分の実践を振り返り、専門職として親子と関わる際の基本姿勢を振り返りながら、語ってもらう(半構造化面接)ことも調査内容に加えた。また、当初の計画にあった②についても、同時に行う事とし、ネウボラ以外の地域の施設(パイバコティや保健センター、ファミリーセンター等)での実地調査も行った。さらには、そのネウボラナースの専門性を習得する上で必要とされる学びのプロセスについても調査することで、ネウボラナースの基本姿勢について多角的に分析する事が可能となると考えた。そこで、タンペレ応用科学大学にてネウボララナースの養成についての聞き取り調査を行う事とした。 さまざまな取り組みと支援の実際についてフィンランドのネウボラにて現地調査し、そこから「対話と傾聴」を基本姿勢とする支援モデルについて検討を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の研究計画の中心である、フィンランド・ネウボラ調査から示唆される親の主体性を育む子育て支援の条件を日本にいかす為の支援モデルについて検討を重ねている。フィンランドのネウボラでは、本研究の計画当初にはなかった新たな取り組みが始まったこともあり、さらなる調査を行う必要が出てきた。ネウボラでは、その時々に応じてまた将来的な視点を持って常に改変されており、その最新の取り組みを調査する事は重要であると考えられた。その為、分析に、より多くの時間が必要となった。その間も、研究協力者でもあるフィンランドのネウボラナースと意見交換をしながら、多角的にそして質的側面からの分析を深化させながら、継続している。平成30年度は、フィンランドでの現地調査として、①ネウボラナースの健診場面に陪席しその後「対話と傾聴」の実践についてネウボラナースと対話を行う②ネウボラナースと他の専門職との連携③ネウボラと連携している施設(パイバコティ・保健センター・ファミリーセンター)の実地調査④タンペレ応用科学大学にてネウボラナースの要請に関する聞き取り調査の4点を実施した。また、3件の学会発表を行い、様々な分野から広く意見を得ることで、さらなる研究の発展への方向性を得られた。 なお、より発展的にそして詳細に分析する事とした為、研究に要する時間が当初計画よりも必要となった。その為、1年間の研究延長申請を行い、承認を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進については、現在までの研究データを分析し、支援モデルを提唱すること及び報告書としてまとめ、研究を総括することを予定している。研究成果を広く社会に還元することを目指し、研究を推進し、総括する予定である。現在までの研究結果から、ネウボラナースの支援の基本姿勢には「対話と傾聴」があることが示されている。また、ここでの「対話」には言語によるものだけでなく、協働行為を伴った「身体的な対話」も含まれていると考えられた。そこで、その基本姿勢の獲得プロセスを明らかにし、実践する上で必要とされる要素を抽出するための分析を行っている。そこから、支援職モデルを探索的に構築することを計画している。 また、支援職モデルの構築だけでなく、今後の日本における子育て支援の実現可能な支援展開についても検討し、研究の展望を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に予定していた報告書の作成には、平成30年度の調査結果で得られた新たなデータとその分析についても加える事とした。その為、報告書作成に関わる費用(翻訳料・印刷費用を含む)について、次年度の使用額が生じた。次年度は、予算残額分を、報告書の作成費用(印刷費)と調査結果の分析に関わる翻訳費用に充当する予定である。今後の報告書作成費用についてもできるだけ安価ではあるものの質を担保した形で行う事とし、継続して経費削減に努めることとする。
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