研究課題/領域番号 |
16K00771
|
研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
野呂 千鶴子 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (20453079)
|
研究分担者 |
日比野 直子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 講師(移行) (30340227)
及川 裕子 日本医療科学大学, 保健医療学部, 教授 (90289934)
今村 恭子 園田学園女子大学, 健康科学部, 講師 (10530181)
城 仁士 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (40145214)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地域完結型高齢者自立生活支援システム / 復興中期 / 被災地高齢者 / 過疎地域高齢者 / 都市部高齢者 / 健康影響 / 生活環境 |
研究実績の概要 |
本研究では、被災地高齢者が生活機能の低下や認知症があっても地域完結型暮らしを実現できるよう、地域完結型自立生活支援システムの提案を目的としている。 28年度は、まず研究班会議を年度当初に4回開催し、研究者間でこれまでの研究成果に基づき、「高齢者の地域完結型暮らし実現に向けた生活環境」について検討し、枠組みを整理した。調査計画を決定し、所属機関の倫理審査を受け、承認された。 それに基づき、過疎モデルとなる京都府福知山市において、高齢者福祉施設管理者・職員、隣接自治会長とともに2回のブレーンストーミングを行い、あるべき姿の確認と現状および課題を整理した。ここでは、自治会の高齢化率が高くなる中で、自治会が独自に高齢者が扱いやすい道具類を配備したり、顔の見える関係づくりのために公共料金の集金や日用品の販売等を行なっていた。さらに高齢者福祉施設と協働し、避難訓練やイベントを行ない、関係性を深めていた事が特徴的であった。 復興中期モデルとなる宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市において、復興を進める行政担当職員、流失した施設を高台移転し再建したグループホーム職員、被災者支援にあたってきた高齢者福祉サービスを複合的に展開する施設職員、復興住宅LSAおよび自治会長にインタビューまたはグループフォーカスインタビューを実施した。震災から6年が経ち、住民の多くは復興住宅に転居していたが、未だ仮設住宅に残る人もあり、高齢者が抱える経済事情が浮き彫りになった。盛土による街の変化によりふるさと喪失感を高めていた高齢者もいた。 都市モデルについては、兵庫県尼崎市において保健医療福祉専門職と開いている勉強会で、研究者間で話し合い整理した概念枠組みに基づき、現状と課題を整理して行く予定である。さらに、28年度活動成果については、29年8月に開催される日本災害看護学会(鳥取県倉吉市)にて、4題報告の予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、科研基盤C 24500913「災害復興に挑む過疎地域の高齢者の主体的な生の全うを支援する生活環境モデルの構築」(野呂・日比野・中村・城,2012年度~2014年度)の成果を継続し発展させる形で、研究活動を行っている。 そのため、研究者間の信頼関係は厚く、体制が整っていた。また、研究フィールドについても信頼関係ができており、順調に調査活動を進める事ができている。 都市モデルの基盤となる尼崎市の保健医療福祉専門職で開催している勉強会であるが、研究代表者が2年間参加している会であり、研究趣旨を説明したところ、今後協働で地域の高齢者の課題解決に向けて取組むことおよび研究協力についての快諾を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
29年度は、28年度実績に基づき、都市モデル、過疎モデルの分析を行なうとともに、高齢者支援者対象の面接調査と地区踏査を実施し、さらに分析する。 ①復興中期モデル:生活環境の変化、高齢者の健康問題と支援の現状を活動分析する。②過疎モデル:被災後10年が経過した地域の自治会を中心とする防災活動が変化してきた様態を、住民の生活自立度および認知症の有無との関連に着目した活動分析を行う。③都市モデル:被災後20年が経過した復興住宅の自治会や支援者が行ってきた生活支援や防災活動の様態を、住民の生活自立度および認知症の有無との関連に着目した活動分析を行う。 これらの結果を統合し、過疎モデル、都市モデルの住民の健康課題の変化と復興に伴う生活環境変化の特性を組み込んだ「地域完結型高齢者自立生活支援システム 復興終結期モデル」を整理する。 東日本大震災後の復興による生活環境の変化と住民の生活自立度低下および認知症支援に着目した「地域完結型高齢者自立生活支援システム 復興中期モデル」を提案し、モデル復興住宅支援者(自治会代表、保健・福祉・医療専門職、LSA等)と実践に向けた課題整理を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
29年3月に宮城県気仙沼市および岩手県陸前高田市で調査活動を行ったが、その際記録したデータのテープ起こし作業は29年4月以降となり、その費用に関しては、29年度執行となった。その他については、概ね計画通りに支出している。
|
次年度使用額の使用計画 |
28年度の未使用分については、主にテープ起こし費用であり、29年度経費として処理する予定である。 29年度予算に関しては、研究計画に基づき調査活動が円滑に行なえるよう、現地協力者との信頼関係を築きながら、推進していく予定である。
|