2016年度は現地でのヒアリング調査を行うとともに、行政とNPOに対し参与観察を定期的に行った。具体的には、生活困難者支援を実施している離島地域(沖縄県)をはじめ、東北地域(宮城県)においてヒアリング調査を行い、地域の実状と地域性に関する内容を把握した。離島地域では社会資源の不足や雇用問題を背景に生活困難者支援を支えるフォーマルサービスが都市部と比較し充実してないことが把握できた。東北地方特に宮城県仙台市では、東日本震災以降、さまざまな生活困難者支援が展開されているなかで、消費者教育に関する取り組みには課題が多いことが分かった。地域性と生活困難者支援の関係では、限られた社会資源のなかで重層的な支援の展開が困難な実態が明らかになった。
また消費者教育プログラム開発の一環では、熊本県内の中学校1か所で授業を行った。おもに中学校1年生50名を対象に「高齢者の消費者被害」をテーマにグループワークを展開し、高齢者の特性を踏まえた当事者意識を検討したほか、生活困難者が生じる社会的構造について授業を展開した。この取り組みでは中学生の意識変化を把握できたとともに、積極的に消費者教育に携わっている自治体では、地域・学校・行政の三者関係が良好で一体的な取り組みを行っていることが明らかになった。
行政との関連では、毎月1回、生活困窮者支援に関する行政会議に参加し、実際の生活困難者を支援する具体的方策について行政内部をはじめ、多職種連携を活用した事例検討を行った。検討した事例は2016年度で70ケース以上にのぼった。そのほか、生活困難者支援に関する文献収集を行い、先行研究の把握に努めた。
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