最終年度において、生活困難者の消費者教育プログラム開発に関わる協働体制について検討を行った。その結果、以下の点について明らかにした。 調査結果から相談者は複合的な問題を抱えて生活をしていることから,本人の精神状態は決して思わしくない。支援段階に入っても,本人と信頼関係を構築するために互いの距離感を徐々に縮めるには短期間では容易ではない。生活困窮者には継続的に関わっていく仕組みが必要である。 調査結果から,家計相談者は就労や健康問題,家族問題など複合的な問題が背景にあり、家計管理に支障をきたしていることを把握した。生活困窮者の生活問題として家計問題を捉える場合,本人の自己決定能力の程度によって生活状況が大きく左右されることが今回の調査結果で明らかになった。 家計相談者の支援効果をどのように客観的に評価するのか,参与観察と研究結果を踏まえ,「生活困りごとシート」を開発した。このシートの特徴のひとつは,相談者の「できる・できない」という能力に着目するのではなく,本人が抱えている生活問題(困りごと)に重点を置いている点である。シートの内容は,困りごとチェックとして,すなわち病気やけが,メンタルヘルスといった「健康・メンタル面」,経済的困窮や家計管理といった「お金に関するもの」,住まいや社会的孤立といった「くらしに関するもの」,就職活動の困難といった「仕事に関するもの」,家族問題やDV・虐待といった「家族に関するもの」という5つのカテゴリーに分けた。この区分によって生活全体のどこに困っているのか,把握することが容易になる。さらに本シートを定期的にチェックをしながら,相談者の見られた変化を記録することで,支援の継続・終結を判断する根拠になると考える。
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