研究課題/領域番号 |
16K00775
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
阪東 美智子 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (40344064)
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研究分担者 |
佐藤 由美 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (70445047)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者生活 / 単身高齢者 / 地域包括ケアシステム / 居宅サービス / 居住継続 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域包括ケアシステムにおいて在宅生活の継続を支える住まいのあり方を検討するための基礎資料となる高齢者の在宅生活の現状と課題を把握することを目的とする。とくに家族による生活サポートが期待できない単身高齢世帯に焦点をあてる。 今年度は、大都市郊外に計画的に開発された住宅団地の居住者を対象に、日常生活の実態や居住継続の意向に関する調査を行い、年代別に高齢期の在宅生活の継続に向けた課題を分析した。外出環境の改善や自家用車に代わる外出手段の整備が、世帯属性や年齢を問わず共通の課題として指摘された。また戸建て住宅では住宅や庭の管理への支援、賃貸住宅では買物等の利便性の向上が課題となっており、介護保険サービスだけでは対応できない日常生活支援が求められていることが明らかになった。高齢者については、健康で要介護度が低い者が多かった。世帯類型(単身・夫婦のみ・その他)に着目して分析を行ったところ、とくに単身世帯では別住まいの子どもや外部サービスに頼ることなく自立した生活を送っていた。一方、高齢者は地域の活動への参加は低く、近所づきあいも互助を期待するほどには活発とは言えない状況が見られた。単身世帯では外出や会話の頻度が低く、とくに男性でその傾向が顕著であった。 また、介護保険法の改正により、平成27年4月に「介護予防・日常生活支援総合事業」が施行され平成29年度4月から全国の事業所で開始されることから、主に単身高齢世帯に対する訪問介護サービスの提供について、課題や影響を把握し次年度の調査に備えるため、訪問介護事業所のヘルパーを対象にインタビュー調査を実施した。軽度要介護者に対する居宅サービスのあり方については、自立支援や介護予防という視点をサービスの中にどのように組み込むかが課題であること、居宅サービスの提供を通した生活状況のアセスメントが重要であること、などの指摘があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究1:在宅高齢者世帯の日常生活と居住継続意向に関するプレ調査」については、関西圏の大都市郊外の計画団地を対象に、概ね予定どおりに調査を実施することができた。対象を高齢者以外にも広げて実施することで、高齢世帯とそれ以外との比較検討が可能になり、高齢世帯の特徴が明らかになった。また高齢世帯についても単身世帯だけでなく夫婦のみ世帯やその他世帯と比較分析することで単身高齢世帯特有の課題の有無が検討できた。 「研究2:単身高齢世帯の居宅サービスの利用実態に関する調査」については、協力を仰げる居宅支援事業所の選定・調整を行う前に、「介護予防・日常生活支援総合事業」の進捗動向やその影響を把握する必要があると考えた。また、調査票の設計のためには、提供されているサービスの具体的内容を把握することが必要であった。このため、研究計画を変更して、最初に訪問介護事業所のヘルパーを対象としたインタビュー調査を実施することにした。さらに、インタビュー調査の結果を反映させた調査票の設計や、調査方法の見直し(訪問介護分科会などの協力を仰ぐこと)などが必要となったことから、当初の予定よりもやや計画が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究1:在宅高齢者世帯の日常生活と居住継続意向に関する調査」については、今年度のプレ調査の結果をもとに、当初の予定どおり、モニター調査会社に依頼しシニアモニターを対象にした調査を実施する。収集した調査データを基に、世帯構成の違い(単身世帯とそれ以外の世帯)に着目して分析を行い、単身高齢世帯の日常生活と居宅継続意向の特徴を明らかにする。 「研究2:単身高齢世帯の居宅サービスの利用実態に関する調査」については、訪問介護分科会や自治体又は地域包括支援センター等に協力を仰ぎ、ケース記録の転記を依頼して提供されている居宅サービスの内容について分析する。あわせて、「介護予防・日常生活支援総合事業」の進捗状況や、同事業が開始されてからの提供されるサービスの相違について、担当者にインタビュー調査を行う。また、重度の要介護状態になっても在宅生活が継続した事例や在宅から施設や病院に移行した事例を収集し、それぞれの事例で提供されていた居宅サービスの内容や住まいの条件などについて整理を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた「研究2:単身高齢世帯の居宅サービスの利用実態に関する調査」がやや遅れていることから、この調査に使用する予定であった調査協力者(ケアマネジャー等)への謝金分を繰り越し、次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に引き続き「研究1:在宅高齢者世帯の日常生活と居住継続意向に関する調査」「研究2:単身高齢世帯の居宅サービスの利用実態に関する調査」を実施する。研究1では、シニアモニターを対象とした調査を行うため、委託費が必要となる。研究2では、居宅介護事業所や訪問介護事業所等を訪問するための旅費、研究協力者(ケアマネジャー、ヘルパーなど)に対する謝金、データ整理などを行う研究補助者への謝金などが、研究費の主な使途である。
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