本研究は、地域包括ケアシステムにおいて在宅生活の継続を支える住まいのあり方を検討するための基礎資料となる高齢者の在宅生活の現状と課題を把握することを目的とする。とくに家族による生活サポートが期待できない単身高齢世帯に焦点をあてた。 高齢者の住まいの状況については、既存統計調査の二次分析等から各自治体の高齢借家世帯の状況を調べた。その結果、総世帯数の概ね1割程度が要見守り世帯に該当し、全国値で民営借家世帯の4分の1が潜在的な住宅確保要配慮世帯であった。また、高齢単身世帯よりも高齢夫婦のみ世帯の方が要配慮世帯の割合が高かった。また、借家世帯の約2割が家賃負担率30%を超えていた。世帯の年間収入が「200万円未満」の世帯でその割合が顕著に高かった。 高齢者の日常生活や居住継続の意向については、大都市郊外に計画的に開発された住宅団地の居住者を対象に調査を実施した。その結果、移動手段の整備や買い物等の利便性の向上、庭の管理の支援など介護保険サービスでは対応できない日常生活支援を必要としていた。単身世帯では別住まいの子どもや外部サービスに頼ることなく自立した生活を送っている人が多かったが、外出や会話の頻度が低く、特に男性にその傾向が顕著であった。 居宅サービスの利用状況については、訪問介護事業所や地域包括支援センター等に対するインタビュー調査を実施した。とくに「介護予防・日常生活支援総合事業」への移行時期であったことから、その施行の影響・効果の把握を試みたが、事業運用の過渡期であることから、従前からの顕著な変化はみられなかった。総合事業に対する利用者の認識・理解の不足も課題として挙げられた。
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