研究課題/領域番号 |
16K00777
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
倉林 徹 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (90195537)
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研究分担者 |
淀川 信一 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (90282160)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ分光分析 / 繊維種識別 / 分子間結合 / 多変量解析 / 定量分析 |
研究実績の概要 |
本研究はテラヘルツ分光法を用い、衣服等の原料となる繊維種に対してこれまで識別が困難であった同族繊維に関する識別方法を開発し、近年の偽装表示問題に対応可能な信頼性の高い品質表示の鑑別法を確立することを目的としている。今年度はセルロース系繊維と絹繊維中の結晶構造に代表される分子間結合を、いかに定量性を確保しつつ評価できるかを検討した。各種繊維の分子間結合に対応した吸収スペクトルが2~10 THzに現れることを実験により確認し、分光分析に必要な繊維の粉末化プロセスによる分子間結合の欠陥発生の状況を各試料の微分スペクトルを用いることで定量的に評価した。この結果、従来の凍結粉砕法による粉末化プロセスにおける欠陥発生の度合が定量化され、凍結粉砕に代わり繊維をミクロトームで裁断する方法で最も欠陥発生が少なくなることを定量的に示した。 この方法を適用し、①分光分析における誤差関数を最小にできる透過率(約40%)になるよう試料濃度を調整し、②2~10 THzにおける電磁波の散乱の影響を除去するため平滑化微分スペクトルを用い、③多変量解析(主成分分析)により定量評価、を用いることによって信頼性の高い定量分析を初めて実現した。 上記の手法を用い、綿と再生セルロース繊維の混合試料について、その混合率が数%以内の精度で測定可能であることが示され、技術の詳細はElsevierのInfrared Physics & Technologyに投稿し採択された。また、同内容は国際会議BIT's 5th Annual Conference of AnalytiX-2017の招待講演で報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テラヘルツ帯に特徴的な吸収スペクトルを生じる繊維種を調べ、今年度は植物由来繊維各種と動物由来繊維種に分類されるシルクに着目し研究を進めた。動物由来繊維種のカシミヤ(山羊毛)やウール(羊毛)については、特徴的なスペクトルが顕著に観察されないことから来年度へ先送りした。ただし、植物由来繊維の中で同質のセルロース分子からなる繊維種のセルロース結晶の形態識別や、同質のフィブロイン分子から形成される家蚕糸と野蚕糸の定量識別に関しては予想を上回る成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、繊維種として植物由来繊維、動物繊維、合成繊維の各種繊維において幅広く測定を行いデータベース化して分析・評価を進める予定であったが、各種繊維種における最適の均質化法(粉末化の手法)を見出すことが重要であることがわかり、繊維種の加工によって生じる分子間結合の欠陥を定量評価することが、本研究の本質であるという考えに至った。このため、本方法が有効な繊維種を2~3種に絞り、繊維試料の加工によって生じる欠陥の解明と、繊維種混合率の定量評価を各繊維種において見出す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の初頭(4月1日から4月5日まで)にハワイで開催された交際会議に参加した。外国旅費が相当な金額になることを予測し、次年度に余裕を持たせる計画に切り替えた。
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次年度使用額の使用計画 |
外国旅費を2回分想定しており、また平成28年度に行わなかったテラヘルツ分光器の消耗品交換などのメンテナンスを手厚く行う予定である。
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