研究課題/領域番号 |
16K00778
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
前田 亜紀子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (00286692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 知的障害 / 児童生徒 / 寒暑感覚 / 拡大情報コミュニケーション / 衣服の調節 |
研究実績の概要 |
知的障碍児童生徒が実際に暑さや寒さをどの程度、感知しているか捉えることは非常に難しい。さらに寒暑に応じて衣服を調節できる子どもとできない子どもがいることは確かだが、その差が生理的な寒暑感覚の差異であるかどうかは不明である。これまで、非接触式および伝導式温熱感受性の実験による検討を小学校高学年生を対象に実施したが、同様の手法による特別支援学校での実施は、知的障碍のレベルや、個々の子どもの状況からできなかった。そこで、調査や実験方法を見直し、現場の教員、知的障碍を持つ子どもの保護者、学習支援を行う大学生の意見を収集し、感知していたとしても感覚を伝えることができない場合をいかに捉えるか検討することとした。知的障碍児童生徒が、これまで生活の中で経験してきた寒暑感覚を、写真やイラストを用いた拡大情報コミュニケーションを提示し、選択することで判明させたいと考える。アンケート調査の成果から、知的障碍児童生徒の保護者は、子どもの寒暑に対する身体反応を詳細に感知している。例えば、「汗をかかない」「顔がほてる」「体温が上がる」もしくは「体温が下がる」「末端冷える」などである。これらは熱中症や風邪といった病症にいたる前の微細な寒暑に対する反応や変化を捉えているものである。こうした変動のレベルを支援を行う場で応用することは、特支教員以外の支援者が注意すべき点として利用できることから、拡大情報コミュニケーションによる観察方法で捉えたいと考えている。アンケート調査と観察手法によるデータを照らし合わせ、寒暑の判定レベルを大まかに作成したい。子どものレベルにあった観察方法の確立と平行して、知的障碍児童生徒の寒暑感覚をどのように捉えるか検討を行い、より汎用的な寒暑の判定や対応につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
知的障碍児童生徒の障碍の程度は多様で、感覚に対する反応も複雑である。寒暑以外の感覚が過敏や鈍麻であることから、感覚統合の課題があり、例えば、実際には寒くても衣服を着ないといった子どもがいる。単なる着用率や着脱による行動性体温調節の観察では判定できない。同時に寒暑をある程度、判断できたとしても、それをコミュニケーションとして他者に伝達することが難しい子どもが多く、小学校高学年で実施した温熱感覚の判定実験を実施できなかった。生理的な寒暑感覚を判明させることが難しいことから、寒暑はある程度感じているが、伝える事が難しい子どもに対して、アプローチすることを考えている。行事や活動における観察過程から、興味関心を示す図形や色、写真やイラストを利用して、寒暑の感覚レベルを大まかに捉え、その程度によって、衣服の着脱支援を促す学習に発展させることを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
特別支援学校教員、知的障碍を持つ子どもの保護者や学習支援を行う大学生から、寒暑感覚の程度を観察からレベル分けすることを検討する。寒暑感覚を感知していたとしても、それを伝えることができない子どものコミュニケーション手段として、これまで子どもたちが生活の中で経験してきた寒暑感覚を、写真やイラスト、図形、色といった拡大情報コミュニケーションによって提示させることを試みる。この手法によって、ある程度、寒暑感覚が判定できる子どもたちが、寒暑に応じた衣服による着脱に発展することができているのか、室温変化や活動量変化時の対処を観察することで判定する。生理的な体温の変動は、特別支援学校での許可や子どもが嫌がらない場合、サーモグラフィによる皮膚露出部の皮膚表面温度の観察を行いたい。子どもの障碍とレベルに応じて、可能な観察方法に変更することも含め、知的障害児童生徒の寒暑感覚を捉えること、またその程度の分類について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
原著論文の投稿料が依頼を経て、総説として掲載されたことによる。また、2017年度から、実験依頼を行っている特別支援学校から承諾が得られず、具体的な実験の実施やそこに関わる謝金等の支出がなかったため。
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