知的障碍児童生徒において、健康状態に影響を与える衣生活や体温調節の指導は必要不可欠である。障碍のため体温調節機能不全を抱えていたり、コミュニケーションに困難があり、体調の変化を訴えられないことがある。感覚の過敏や鈍麻があり、生活上の困難さは周囲に理解されにくい。就学段階や障碍によって衣生活の自立は異なり、支援方法は子どもの実態によって検討していく必要がある。 研究では、知的障碍児童生徒の体温調節に関する実態を把握する調査と、衣生活の自立につながる支援の手立てを検討・提案することを目的とした。調査の回答は保護者によるものとし、調査期間は2019年10月~11月であった。調査対象は群馬県内の知的障碍特別支援学校4校の児童生徒(185名)と小学校1校の低学年の児童(183名)であった。 本調査の結果、寒暑時の身体的特徴として、知的障碍児童生徒は暑くても汗をかきにくく、手足が冷えやすい。さらに、寒暑時の様々な身体変化が表れにくく、小学校児童に比べ、発汗機能や体温調節機能の未発達や障碍を抱えている可能性が示唆された。両校種ともに熱中症対策が重要であり、子ども自身で身体的な体温調節を行うことが困難な場合は、周囲が子どもの実態に即した温熱環境設定に注意を払い、予防のため、こまめな水分補給や衣服の調節が必要である。 寒暑に関する言葉の理解は、全ての用語で知的障碍児童生徒が小学生より低く、前者において所属学年と療育手帳の等級間で有意差が認められ、学年が上がるほど、障碍の程度が軽度なほど、寒暑に関する理解が高い傾向にあった。寒暑感を伝える言動を知的障碍児童生徒自身で行うことは困難であったが、動作や表情で意思表示をしており、その手段はジェスチャーや表情など個々に決まった動作であった。子どもの体温調節の自立につなげるためには、一人ひとりに合った支援を行うことが求められていることが明らかとなった。
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