研究課題/領域番号 |
16K00781
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
田中 勝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70202174)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歴史的集落・町並み / 次世代育成 / 重伝建地区 / 町並み学習 / ペーパークラフト / 授業実践 |
研究実績の概要 |
1)重伝建地区を活用した民家・町並み・まちづくり学習の授業実践内容を詳細に把握するため、全国117ヶ所の重伝建地区内及び周辺に立地する小・中・高校計506校を対象にアンケートを実施した。内容は平成27年度に実施した調査と同一とした。重伝建地区の歴史や特性に対応させて、学校種、教科、学年別に授業の目標、活動内容、外部講師の活用、授業前後の子どもの変化などの授業実践の実態を全国規模で具体的に把握することができた。 2)佐賀県鹿島市A小学校の協力を得て、平成28年度に開発した町並み学習教材「南舟津の茅葺き三棟ペーパークラフト」を活用した5年生の総合的な学習の時間の授業実践を行った。授業観察及び授業後の児童の感想文等の分析により、ペーパークラフトを使った体験的な学習は地域に残る歴史的町並みや民家の構造・間取り等の理解に役立ち、地域の人・もの・自然を題材にしたふるさと学習の充実に有効であることが確かめられた。また、他の民家ペーパークラフトを活用して高校家庭科の授業実践を山梨県内2校で行うなど、ペーパークラフトの活用事例を蓄積することができた。 3)歴史的集落・町並み保存のための次世代育成の具体的取組を明らかにするため、「肥前浜宿スケッチ大会」、「合掌造り屋根組み授業」、「茅葺き体験学習」等の現地調査と町並み保存団体への聞き取り調査を行った。学校と地域・自治体・NPO等との積極的な連携が地域に根ざした豊かな学びに結びついていることを実証した。 4)民家ペーパークラフトの学校での活用を促進するため、岐阜県白川村の重要文化財「旧遠山家住宅」をモデルにした既存ペーパークラフトの改良(部品数の削減、組立方法の見直し等)を行った。 5)歴史的集落・町並み保存のための担い手育成に関する国際比較研究のため、調査候補都市を対象に基礎資料を収集するなど、次年度の現地調査に向けた準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画に沿って研究に着手し、期間内に一定の成果を得た。 1)重伝建地区を活用した民家・町並み・まちづくり学習に関する調査については平成20年度以降定期的に実施し、授業実践データを蓄積してきた。新たに平成29年度のデータを収集し、多様な実態を経時的に分析することが可能となった。 2)学校、教育委員会、町並み保存団体等の協力を得て民家ペーパークラフトを活用した授業実践を行い、町並み学習教材としてのペーパークラフトの効果と改善点について新たな知見を得ることができた。また、ペーパークラフトの授業への導入のネックとなっていた組立時間については部品構成や組立方法の見直しにより組立時間の短縮化の目処がついた。 3)子ども町並みガイドや合掌造り屋根組み体験学習に加えて茅葺き体験学習の授業実践について調査することができたが、モデル的な事例調査を全国規模で追加していく必要がある。 4)歴史的集落・町並み保存のための担い手育成に関する国際比較調査については平成29年度中の現地調査(第一次)を計画していたが、調査内容の整理のために関連資料の収集を継続する必要があり、また訪問先の自治体や学校との事前調整に十分な時間をかけた方がよいと判断し、海外都市を対象とする現地調査は平成30年度実施とした。
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今後の研究の推進方策 |
1)全国117ヶ所の重伝建地区を対象とした民家・町並み・まちづくり学習の調査については平成29年度調査データの詳細分析を行うとともに、前回調査結果等との比較を行う。特色ある授業実践例については現地調査を行う。 2)民家ペーパークラフトを新たに1種類開発する。また、学校・自治体・教育委員会・町並み保存団体等と連携し、民家ペーパークラフトを活用した授業実践の事例研究を積み重ねる。 3)歴史的集落・町並み保存のための担い手育成に関する国際比較調査では2つのモデル都市を対象に町並み保存の取組や学習プログラムの調査を実施する。 4)3年間の研究成果を次世代育成プログラム及び事例集(副読本)として取りまとめ、歴史的集落・町並みの保存・継承を担う次世代育成の意義・課題・方向性について整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旧遠山家住宅ペーパークラフトの改良にかかる費用(デザイン、印刷等)が当初見込み額よりも少なくなったこと、平成30年度に実施する海外比較調査にかかる費用(旅費等)を十分に確保しておく必要があること、調査資料の分析・加工・提示等に必要なノートパソコンの購入を当初計画より1年早めたこと等により、次年度使用額が生じたものである。 次年度使用額は平成30年度の直接経費分と合わせて海外比較調査の旅費の不足分等に充てる予定である。
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