研究課題/領域番号 |
16K00789
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
葛西 リサ 立教大学, コミュニティ福祉学部, 特別研究員(RPD) (60452504)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 空き家 / シェア居住 / ひとり親 / ケア / 住宅支援 / 居住貧困 / 生活保護 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
全国の母子世帯向けシェアハウスの調査を実施し計30カ所の聞き取り調査を終えた。うち、3カ所のシェアハウスにおいて、12名の居住者に対して、インタビュー調査を実施した。 事業者は営利企業からの参入が最も多く、更に、不動産業界が7割ほどを占めた。但し、それ以外の業態(有料人材紹介、介護事業者等)も見られ、そのビジネスモデルの確立が予測されるところである。事業者への聞き取りについては、入居者の階層性を示すフィルターとなる家賃額を軸にその傾向を見た。やはり、低家賃~中家賃ハウスにおいて、ケアの負担は大きくなっており、その内容も、同伴支援や見守り、相談等多岐に及んだ。他方で、高所得ハウスでは、ゆるやかなコミュニティが出来上がっているとみている事業者が多かった。また、ケアニーズの把握に困難を感じているハウスは多かった。最もスタンダードなケアは、週数回の夕食や育児等を付帯するというものであるが、うち複数のハウスが、入居者から不要との要望が挙がり、保留にしている、廃止したなどの回答が得られた。 他方、居住者への聞き取り調査は、低(生活保護レベル)、中(7万円程度)高(10万円強)家賃ハウスで実施した。そのニーズは、低~中家賃ハウスでは、他に行き場がなかった、施設入居が難しかったなどの回答が得られた。他方、高家賃ハウスでは、サービスに魅力を感じたという意見が圧倒的に多く、次いで、良好なコミュニティへの帰属への関心と言う回答が挙がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
事業者への聞き取り調査については、建設中のもの、募集予定のものも含めて30カ所と、ほぼ、国内に現存する母子世帯向けシェアハウスすべての対象へのアプローチが実現した。更に、その結果の一部についてを分析し、都市住宅学会研究論文に投稿し、現在、査読回答待ちの状況である。更には、NPO法人西山夘三(にしやまうぞう)すまい・まちづくり文庫のブックレットに、その内容をまとめた。 入居者側への調査についても、順調に進んでいる。対象も、低、中、高家賃ハウスとバランスよく被験者を集めることができた。 なお、本研究では海外事例についても視野に入れており、その実現を3年目に繰り越しているため、やや遅れているという自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
全国の母子世帯向けシェアハウス事業者を集めた集会を予定している。その会にて、運営課題やノウハウを共に共有することで、組織力を高めることが狙いである。具体的には、現在、1事業者が単体で集客を実施しているため、入居相談があっても、入居が許可できない、あるいは入居希望者のニーズを満たさない場合には、「断る」という手段以外に残されていない。その点、多様な特徴を持つシェアハウス事業者がネットワークを組めば、入居者を紹介し合えるメリットを有することができ、入居する側も選択肢が増える。 また、入居者調査の継続と、海外事例の収集を今年度の目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外調査(3回)を、先方の予定で、次年度に繰り越したため、35万円を3回分を次年度に繰り越し、調査を実施する予定である。また、今年度分の60万円については、国内旅費や論文発表等に充てる。
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