本研究は、ひとり親世帯の逼迫した住生活問題が空き家活用型と育児・家事分担型の集住によって大きく緩和されるのではないかというスタンスに立ち、我が国において成立しうるひとり親向け「問題解決型」の成立に向けて、その実態把握を行った。 具体的には、問題解決型集住の実態を把握するために、全国30カ所の母子シェアハウス(SH)事業者への聞き取り調査を実施した。その内容は運営の実態として①運営母体、②シェアハウス開設の背景、③ハードの取得方法と概要、④家賃額とターゲット、⑤共益費額と内訳、⑥集客方法、⑦NPO等との連携体制の有無、⑧ケアサービスの有無と採算性、⑨定員数と設定理由、⑩入居世帯の類型(母子のみ、あるいは、その他の世帯との混合)とその設定理由ほかを訪ねた。開設後の課題等については、運営者が抱える課題をランダムに回答してもらったほか、3カ所のSHにおいて入居者計10名への聞き取り調査、1カ所のSHにおいて10名を対象に入居時相談を行った。 その結果、運営主体は不動産関連企業が多く、居室の規模は最小では7.4㎡、最大で34.7㎡最大である。最低家賃は3.5万円、最高では10万7千円と幅広く、何らかの生活サービスを提供しているという回答は約6割を占めた。ほとんどが条件により無職でも入居できる物件である。以上より、母子SHは地域的な偏在はあるものの、住宅に困窮する母子世帯の住まいの受け皿となる可能性は充分にあると考えられる。家賃額も幅広く、低所得階層のみならず、幅広い階層に対応しうる点も興味深い。課題は①集客の困難、②人間関係のトラブル等の解決に手間がかかる、更には③DV等入居者が抱える課題解決への知識がなく対応が困難などの意見も聞かれた。こういった課題を解消するために本研究では、全国の母子SH事業者を集め課題を共有ベースに、関連機関との連携、学習会、入居者相談機能の必要性を提示した。
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