研究課題/領域番号 |
16K00791
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研究機関 | 東北生活文化大学 |
研究代表者 |
川又 勝子 東北生活文化大学, 家政学部, 准教授 (50347910)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域文化研究 / 伝統工芸 / 染色 / 型紙 / 電子保存 |
研究実績の概要 |
かつて仙台地方において染色されていたこの地方特有の型染め:常盤紺形染、注染染物(仙台手拭と仙台浴衣)を研究対象とし、現存する型紙の整理・分析と、型紙文様等の型紙形態を電子的に保存・補修すると共に、型紙の復刻と染物の再生および現在の染色技術へ応用することを目的とする。 これまでに約1,700枚の仙台地方の民間所蔵注染型紙についての調査と電子保存を行っているが、平成28年度は名取屋染工場所蔵(仙台市青葉区)所蔵注染型紙のうち、新たに412枚についての調査を行うことができた。その結果、約40%の型紙に破損・欠損等の劣化がみられた。さらに型紙形態からは手拭染色用の型紙が9割以上であること、販路は北海道から関東にかけての広範囲にわたっていたことが示された。型紙文様の電子化は、パソコンとフェイスアップスキャナを用いて行った。当年度は、261枚の型紙形態の電子保存と破損文様の電子的補修を行うことができた。 一方常盤紺型型紙と常盤紺型染裂の調査として、新たに実物資料の測定(厚さ・糸密度等)を行い、常盤紺型や常盤紺型染布の形状的特徴の一部を明らかにすることができた。 また、電子化した型紙文様を活用して工芸染色技術の発展へと繋げるためのレーザー加工機による常盤紺型文様の型紙制作を試みた。当年度はこれまでの電子保存画像をそのまま応用したところ、裁断寸法に若干の差が見られ、常盤紺型の特徴である絣文様を十分に表現するに至らなかった。今後、電子保存画像と加工機の彫刻条件の微調整を行うことで改善したい。 さらに、収録した電子データの活用法の一つとして資料集の編集作業を行い『仙台型染資料集XI』を刊行することができた。また、研究成果の一部を「常盤紺型―手ぬぐいと常盤紺型展」(平成28年6月18日~7月3日、仙台市若林区文化センター)に出品した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したとおり、注染型紙の調査と電子保存は概ね予定通りに進められている。また、常盤紺型資料についても実物資料調査を行うなど、順調に進められている。一方で、レーザー加工機による複製型紙の制作について、若干の遅れが生じた。この理由は、導入予定機材の価格上昇のため、導入機種について再検討する期間を要したためである。今後、より適切な裁断条件について詳細に検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も前年度に引き続き、常盤紺型および注染型紙の調査と電子保存を行う。すなわち、資料状態の記録と計測の他、注染型紙を4分割スキャンすることで型紙形態を電子的に保存し、汎用フォトレタッチソフトを用いて4分割画像の合成と電子的補修を試みる。また、伝統染色を新しい技術に応用するための電子データ活用として①レプリカ型紙制作(レーザー加工機を用いて常盤紺型に特徴的な絣文様を表現するための画像加工と裁断条件設定)、②デジタルプリントによる染色品制作(近年一般化している環境配慮型染色とも言える昇華インク転写式インクジェット捺染機を新たに導入する)の二点を試みることで伝統文様の再生方法ついて検討する。また、インクジェット捺染機の導入により、これまで用いてきた顔料型インクジェットプリンタよりも鮮明に布地への染色ができるようになる。型紙再生や型紙文様の染見本制作だけにとどまらず、衣料品やプラスチック製の生活雑貨等にも、仙台に古くから伝わる型紙文様を広く応用する方法について検討する。 一方で、当年度も『型紙資料集』の続編作成と、データベース構築を引き続き試みるほか、常盤紺型染や注染手拭・浴衣以前に仙台地方で行われていた小紋染についての調査も予定している。 さらに、地域の衣生活文化としての仙台型染めの存在を広く周知するために、今後も大学での実習授業に取り上げる他、ワークショップや研究成果の展示会等を開催するこことで、地域の伝統文化に現代の技術・感性を加えた成果を公開する。
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