アパレル製品設計のための50代女性の3Dシミュレーションモデル開発に向けて着装ボディの検討と3D上での衣服素材表現の検討の2つの観点からの研究を目的とした。 着装ボディの検討においては、体型調査のために40~60歳の女性162名(平均51.5歳)の人体計測(三次元計測)を実施し、三次元計測データを相同モデル化し体型分析を行った。分析は、相同モデル作成方法の検討や分類方法の検討等、様々な方法で行った。その結果、若年群に比べ中年群は周径が大きくなると共に、体型のバラつきも大きくなり、そのバラつきが主成分分析における因子の差として現れることが分かった。次に中年と定義した20年間(40~59歳)の変化を検討するために、中年群を40歳代と50歳代に分類して比較したところ、平均形状にほとんど差は見られなかったが、主成分分析の抽出因子にわずかに違いがみられた。そこで、40代前半と50代後半で比較したところ、体型差がみられ、体型の変化がこの間で生じている可能性が示唆された。この結果は、今後の着装ボディの分類に重要なポイントだと判断し、今後はこの差をクラスター分析において類型化する予定である。 3D上での衣服素材表現の検討においては、主要なテキスタイル資料(ハンガースワッチ)の収集を行い、その資料の力学的特性データ(曲げ特性、引張特性、厚さ、重量)を、3Dシュミレーションソフト(Enterprise(株)ユカアンドアルファ)へ入力した。次に、実際に作成したフレアースカートのシルエット(三次元計測)と、、前述のソフトでシミュレーションしたスカートシルエットの比較を行った。その結果、着装シミュレーションにおいて、生地の素材感はよく表現されていたが、柔らかい、たれ感のある生地についてはそのたれ感の表現が不十分であること、硬い生地使用時の縫い代の表現に課題があることなどが明らかになった。
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