本研究の目的は、近世小袖服飾類の研究にとって、現存服飾資料に次いで重要な資料である小袖雛形本・型染見本帳、及び色見本帳等の江戸時代の呉服関連文献資料の現時点における所在(所蔵者)と、それらの具体的保存状況を明らかにして、研究者等によるこれらの活用の便を図ろうとするものである。以上の目的に沿って、研究最終年である本年度は、主に以下の4点から研究を進めた。 (1)前年度に引き続き、文献目録の検索、及びインターネットによるウェブ公開がなされているアーカイブの検索などにより、江戸時代の小袖雛形本(版本)の所在確認を行った。 (2)愛知県の西尾市岩瀬文庫所蔵の小袖雛形本の実地調査を行い、ウェブ上からのキーワード検索では発見できなかった小袖雛形本関連資料を閲覧することができた。特に版本である小袖雛形本が江戸時代後期に姿を消した後、これに代わって小袖の発注・注文の際に用いられた肉筆雛形本と色見本帳を、ともに複数種調査することができたことは大きな意味がある。 (3)前年度に引き続き収集した小袖雛形本等の呉服関連資料の撮影を行った。岩瀬文庫所蔵の小袖雛形本及び肉筆雛形本、色見本帳については、調査者による撮影が禁じられているため、岩瀬文庫から指定された現地カメラマンに当該資料の撮影を依頼した。 (4)3年度に渡り情報収集してきた小袖雛形本(版本)・着物雛形本(版本)、及び肉筆雛形本や型染見本帳等の所在と、所蔵者による公開・非公開の有無を明らかにした。
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