本研究では以下の内容で研究実績を積むことができた。 2018年 須藤良子「コプト裂およびプレ・コロンビアン染織裂に関する調査報告」『大妻女子大学家政系研究紀要』54号、須藤良子「日本で蒐集されたコプトの染織品について」姫路市立美術館『イメージを織る』展覧会カタログ、2019年 須藤良子'Report on Coptic Textiles in the Collection of Ashmolean Museum’『大妻女子大学家政系研究紀要』55号、須藤良子「エジプト・コプトの染織品とインド更紗の制作年代および制作地に関する研究」『月刊考古学ジャーナル』Vol.725、「コプト裂とインドの更紗」女子美術大学美術館『コプトの染織』展カタログ、2020年 岩永悦子「エジプトに渡ったアジュラック技法の蓮華文様インド更紗について」『福岡市美術館研究紀要』第8号 これらの研究成果から、エジプトのコプト裂と称されている染織品には多くのインドで制作された更紗(ブロック・手描き)が存在することが分かり、それらの年代は古いもので700年代で多くのものは1200年代から1300年代であることが、放射性炭素年代分析の結果明らかとなった。エジプトのコプトの織物はウールと亜麻糸の織物で、綴れ織りの技法で織られていることはコプト裂が発掘され始めた1900年代から知られている事実ではあるが、発掘された多くの染織品を調査すると、コットンの捺染された染織品も含まれていることが分かる。これらは、素材や技法からインドの更紗であることが指摘できる。5世紀ころよりインドの木綿布が東南ジアをはじめアフリカまで流通していたことは多くの文献からも分かっている。今回は調査と科学的な手法により、それらの年代を明らかにすることができた。制作地についてはインドグジャラート地域の可能性が高いが、さらなる調査が必要である。
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