研究課題/領域番号 |
16K00805
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
三宮 基裕 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (40331152)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者住宅 / 転居意識 / 転居不安 / 在宅高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究は、中山間地域を含む小都市に居住する高齢者の転居志向と阻害要因の観点から、都市部とは異なる高齢者住宅のあり方を示すことを目的としている。 平成28年度は、在宅高齢者の転居に対する意識に関する記述式アンケート調査を実施した。調査対象はN市に在住する市民講座受講者114名で75名から回答を得た。回収率は65.8%である。 高齢期の転居願望については「大いにある・少しある」が30.7%、「どちらともいえない」が17.3%、「あまりない・ほとんどない」が50.7%であった。これらを「積極群」「葛藤群」「消極群」として分析をおこなった(以下、転居意識)。転居に対する不安は「ない」とするのが積極群(26.1%)・葛藤群(15.4%)・消極群(18.4%)であり、積極群がやや不安が少なかった。一方、不安が「あり」とするのは積極群(73.9%)・葛藤群(38.5%)・消極群(65.8%)であり、不安がある者についても積極群が高かった。転居願望を持ちつつも不安を抱えている者が多いことが分かる。目的変数を転居意識、説明変数を属性・現住居の所有関係・転居経験・社会活動として数量化Ⅱ類分析をおこなうと、消極群には「単身」「共同住宅での居住経験」「男性」などが影響し、積極群には「相続した土地に居住」「75歳以上」「就業している」などが影響していた。転居意識と転居の不安内容について相関分析をおこなうと、「転居後の生活費」「転居後の生活」「転居費用」「現住居の処分」において、積極群は不安が大きく消極群は小さい傾向が認められた。 以上の結果は、市街地に居住する高齢者を対象としたものであるため、中山間地域では異なる結果が予想される、今後は、対象地域を変更して調査し結果を比較することで小都市における高齢者住宅のあり方を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、自宅居住者に対するヒアリング調査を実施し、高齢者住宅への転居阻害要因を明らかにすることを計画していた。 ヒアリング調査により個々の意識をより詳細に調べる予定であったが、記述式アンケートにすることでヒアリング調査よりもケース数を増やすことができ、統計処理することでおおむねの傾向が把握できると考え、調査方法を変更した。 採択時の計画は研究2年目に調査を完了する予定であったが、今年度の成果から、中山間地の高齢者の転居阻害要因を明らかにする必要があると考え、次年度の3年目に追加調査をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年3年目の平成30年度は、前年度実施した自宅居住者に対する記述式アンケート調査を中山間地域に居住する高齢者を対象に実施し、市街地と中山間地域における高齢者住宅への転居阻害要因の違いを明らかにし、地域特性に応じた求められる高齢者住宅の役割りを明らかにする予定である。具体的には7月までに前年度結果の精査と調査計画の立案、倫理審査を完了し、8月より調査対象者への依頼、9~11月にかけて調査票を配付・回収する。順次、分析をおこない12月よりまとめ、学会での成果公表をおこなう。 また、2年目の研究成果については7月ごろより論文としてまとめ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初予定していた各戸訪問によるヒアリング調査を記述式アンケート調査に変更したため、謝金・旅費として予定していた経費をアンケート分析のための統計解析ソフトの購入に充てた。そのため、当初予算の未消化が生じた。 使用計画:記述アンケート調査に切り替えたため、記述データの分析が必要となる。前年度は統計解析ソフトを購入し分析をおこなった。今年度は、当初予算と前年度未消化分を合わせてテキストマイニング分析が可能な統計解析ソフトの購入を予定している。
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