本研究は、ネギ属野菜が有する過酸化脂質の還元作用(活性なヒドロペルオキシ体LOOHを不活性なヒドロキシ体LOHに変換する)を利用することにより、調理加工および消化過程において生成蓄積する過酸化脂質量を低減化する方法を開発することを目的とする。昨年年度までに、以下の結果を得ることができた。 ①ネギ属野菜として、万能ねぎ、長ネギ、タマネギ、ニンニクおよび比較対照としてニンジンを材料とし、遊離脂肪酸LOOHである13-HpODEを用いた場合、長ネギのLOOH還元作用が最も強いことが明らかになった。 ②トリアシルグリセロールヒドロペルオキシドLOOHであるTG-OOHの場合、長ネギのLOOH還元作用はみられなかった。
食肉中の脂質過酸化の触媒としてミオグロビンが働く可能性があるが、ミオグロビンはLOOHを還元消去するペルオキシダーゼ活性を有する。。そこで本年は昨年に引き続き、ミオグロビンとLOOH共存下での長ネギの作用を検討した。その結果、長ネギはミオグロビンのペルオキシダーゼ活性を強めることがみとめられた。さらに消化酵素であるパンクレアチンは長ネギの13-HpODE還元活性に影響しないことが確認された。 一方、ミオグロビンを含むヘムタンパク質が触媒として脂質過酸化反応を亢進する可能性を検討した。ヘムタンパク質としてヘモグロビンを用い、大腸モデル細胞(Caco-2細胞)の脂質過酸化反応をTBA法で検討した結果、13-HpODEはヘムタンパク質の共存により、細胞脂質の過酸化反応を惹起させることがわかった。したがって、消化管中での食事由来成分によるLOOHの還元消去は生体防御に意義があることが示唆された。
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