研究課題/領域番号 |
16K00823
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
石川 洋哉 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (00325490)
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研究分担者 |
清水 邦義 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20346836)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗酸化成分 / におい分析 / 脂質過酸化反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、食品の酸化反応に起因するにおい成分の抗酸化物による生成抑制挙動に着目し、1)におい嗅ぎGCMSシステムを駆使した各種抗酸化物のにおい成分抑制挙動の解析、2)Median effect analysisを用いた抗酸化物の相乗効果解析、3)各種機器分析による相乗効果発現メカニズム解明を試みることを目的とする。29年度は、超高速GC(電子嗅覚ノーズHeraclesⅡ)とにおい嗅ぎGCMSを用いて、リノール酸過酸化反応に起因する酸化臭成分に対する各種抗酸化物の生成抑制挙動を詳細に検討した。実験には、α-tocopherol、カテキン類、フラボノール類など計14種の抗酸化物を用いた。研究の結果、高速GCで得られた結果の主成分分析により、抗酸化物によって揮発性成分の抑制挙動が異なることが判明した。各種抗酸化物による揮発性成分抑制挙動の違いは、リノール酸過酸化物の生成阻害率が低いほど顕著に認められ、α-tocopherol、カテキン類、ケルセチンなどが異なる位置に配置されることが明らかになった。におい嗅ぎGCMSにより同定されたhexanal,(E)-2-heptenal,1-octen-3-one,(E)-2-octenal,(E,E)-2,4-nonadienal , (E,E)-2,4-decadienalに着目して、再度超高速GCデータでの主成分分析結果を確認した結果、(E)-2-octenal, (E,E)-2,4- decadienalなどの酸化臭成分に対して、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン、ECg、EGCgなどがα-tocopherolよりも強い抑制効果を示すことを確認した。これら一連の結果は、脂質過酸化物に対する抗酸化効果が同等であったとしても、個々の酸化臭成分に対する生成抑制効果が抗酸化物によって大きく異なることを示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、各種抗酸化物によるリノール酸由来酸化臭成分の生成抑制挙動を解析するために、昨年度使用したにおい嗅ぎGCMSと併せて新たな分析装置である超高速GC(電子嗅覚ノーズHeraclesⅡ)を導入した。昨年度のGCMSを使用した検討では、限られた酸化臭成分の挙動の解析しか行えなかったが、本年度新たに導入した本超高速GCの解析により、揮発性成分全体のパターン解析が可能となり、各種抗酸化物を使用した場合の酸化臭成分の生成挙動の違いをより明確に論じることが可能となった。本検討により、研究は順調に進展し、代表的な抗酸化物であるα-tocopherolと比較して、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン、ECg、EGCgなどの抗酸化物を用いた場合の酸化臭抑制挙動が大きく異なることを明示するに至っている。さらに、におい嗅ぎGCMSで確認された酸化臭成分のにおい情報と、高速GCでの結果を併せて解析することにより、α-tocopherolとその他抗酸化物での効果の違いが、特に(E)-2-octenal, (E,E)-2,4- decadienalなどの酸化臭成分の挙動の違いによるものであることを新たな知見を見出すことが出来た。本成果は、各種抗酸化物による酸化臭生成抑制メカニズムの解明に対して鍵となる成果であると考えられる。一連の研究は、研究計画どおり進捗しており、特に大きな問題は認められなかった。 以上の理由により、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成28・29年度の研究成果を基に、継続して超高速GCとにおい嗅ぎGCMSを用いて、リノール酸過酸化反応に起因する酸化臭成分に対する各種抗酸化物の生成抑制挙動を行っていくが、研究最終年度では脂肪酸の対象拡大、抗酸化成分2成分使用時の酸化臭抑制効果の解析に重点を置いた研究を進める予定である。具体的には、対象脂肪酸をリノレン酸,EPA,DHA,リン脂質(ホスファチジルコリン)などに設定した場合の効果を詳細に検証するとともに、これまで得られた成果に基づき選定された酸化臭抑制に効果的な抗酸化物2成分混合系で、相乗効果を発現する抗酸化物の組合せを見出す。解析には、Median effect analysisを用い、相乗効果の「有無」と「程度」を各濃度レベルで詳細に解析ことを試みる。一連の解析を通じて、抗酸化物の相乗効果発現における抗酸化物の活性発現要件を明らかにし、相乗効果の発現メカニズムを検討することにより、抗酸化成分間で生じる相互作用の理論的裏付けを試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由)研究はおおむね順調に進展しているが、経費の一部を繰り越す予定となっている。この繰越額は研究初年度に繰り越された経費に相当するものであり、本年度の研究に関しては予定通り進行している。研究最終年度では、これまで2年間での研究の実績に基づき、様々な脂質過酸化反応系に対する抗酸化成分の酸化臭抑制効果を検証するとともに、抗酸化物の併用時の相乗効果等も詳細に検証する予定であり、繰り越された研究経費は有効に使用する予定となっている。 使用計画)次年度使用額となった金額は、全て物品費として使用予定である。具体的には、におい嗅ぎGCMSシステムを稼働させるための高純度ヘリウムガス、窒素ガス、液体窒素、その他装置用の消耗部品に使用する予定である。また抗酸化物および、抗酸化試験に用いる試薬一式(エタノール等の溶媒、反応試薬)および関連のピペット、サンプルビン、ガラス器具など一式を次年度に購入し、使用する予定である。
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