本研究では、食品の品質劣化の主要因である酸化反応、特に脂質成分の過酸化反応に着目し、脂質過酸化反応に起因するにおい成分の生成と抗酸化物を活用した生成抑制挙動の解明を試みた。具体的には、1)におい嗅ぎGCMSシステムを駆使した各種抗酸化物のにおい成分抑制挙動の解析、2)Median effect analysisを用いた抗酸化物の相乗効果解析、3)各種機器分析による相乗効果発現メカニズム解明を試みることを目的とした。30年度は、前年度に引き続き、超高速GC(電子嗅覚ノーズHeraclesⅡ)とにおい嗅ぎGCMSを用いて、リノール酸過酸化反応に起因する酸化臭成分に対する各種抗酸化物の生成抑制挙動を詳細に検討した。実験には、α-tocopherol、カテキン類、フラボノール類など計14種の抗酸化物を用いた。α-トコフェロールと各種抗酸化物の異臭成分抑制挙動を比較した結果、α-トコフェロールでは脂質過酸化物阻害効果に対するHexanalの生成抑制効果が弱いことが新たに明らかになった。(脂質過酸化物阻害率にするHexanalの阻害率の傾きが0.53)。一方、ケンフェロール等フラボノール類およびカテキン類ではHexanalに対する抑制効果が強い(傾き1前後)ことが判明した。続いて、α-トコフェロールとの2成分併用効果を検証した結果、α-トコフェロール単独では抑制効果が弱かった異臭成分に対しても、併用時には効率的に抑制可能であることが示された。一方、相乗効果の検証の結果、ケルセチンやEGCgなどでは、いずれの条件下でも異臭成分の抑制効果において高い相乗効果が認められたのに対して、ケンフェロールなどでは、異臭成分抑制効果における相互作用(相乗・相殺効果)が大きく変化することが確認され、用いる抗酸化物によっては添加濃度の設定が極めて重要であることが示唆された。
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