研究課題/領域番号 |
16K00828
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中村 卓 明治大学, 農学部, 専任教授 (30328968)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | おいしさ / 食感 / 風味 / 食品構造 / 官能評価 / プリン / ゲル / クリーミー |
研究実績の概要 |
本研究は、食品のおいしさの感性表現(クリーミー・濃厚・コク等)を見える化することを目的としている。このような感性表現は、無意識で直感的なトップダウン処理のため具体的に説明しようとすると困難を伴う。感性表現を具体化するためには、食感発現と風味放出を咀嚼の時間軸に沿って意識化し、ボトムアップ解析する必要がある。そこで本研究では、官能評価・物性測定・構造観察・成分定量の手法を用いておいしさの感性表現を見える化する。 本年度はプリンのおいしさにとって重要な「クリーミー」に着目した。食感の発現や風味の放出は食品を咀嚼破壊する過程で時間と共に変化する。この過程で、基本食感3要素と原材料風味の知覚を総合的に判断し、クリーミーを認知する。そこで、市販プリンと、モデルプリン(具体的には砂糖とミルク・バニラ・エッグの各フレーバーを添加したゼラチンと寒天の混合ゲル)を対象とした。時間軸を意識した各種の官能評価を行った。さらに破壊過程に着目した物性測定、構造観察を行い、官能評価の結果と相関付けることで、ゲル状食品のクリーミーを見える化した。クリーミーには、「適度な粘り」や、「口当たりのなめらかさ(広がりやすさ)」、「舌触りのなめらかさ (構造の細かさ)」といった食感が特に重要であった。「粘り」や「口当たりのなめらかさ」は物性測定から、「舌触りのなめらかさ」は構造観察から明らかにした。さらに、クリーミーの大部分は食感から決定され、風味が加わると、咀嚼後半のクリーミーの持続性が高くなることが明らかとなった。更に、市販プリンのGC-MSによる定性分析の結果、ブルボンバニラの香気成分としてVanillin、牛乳成分の香気成分としてBenzaldehydeが検出され、プリンにおけるクリーミーは、複数の風味が同時に知覚されることで認知され、特にバニラ風味がプリンのクリーミーに関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、『(イ)意識化→(ロ)単純モデル化→(ハ)見える化』の3つのステップで実験を進めている。(イ)「クリーミー」のようなおいしさの感性表現を口腔内の使用部位と時系列について知覚レベルで官能評価し、感性表現を具体的な咀嚼過程で意識化する。(ロ)適当な機器による破壊モデルを選択し力学特性を測定し、破壊途中の香味放出を定量し、同時に破壊構造を観察し、破壊メカニズムを明らかにする。(ハ)この破壊メカニズムを考慮し、得られた破壊構造と力学特性と香味放出と官能評価の結果を組み合わせ、統計処理して、感性表現を構造と力学特性と香味放出により具体的かつ客観的に見える化する。 本年度は(イ)~(ハ)のステップを市販プリンとモデルゲル系の2つの対象で行った。その成果を学会で以下のように発表した。 2017年8月28日-30日 日本食品科学工学会第64回大会①市販プリンにおける”クリーミー食感”の見える化 ○佐々木梨紗1、鈴木真人2、日下舞2、中村卓1(1明治大農・農化、2明治大院農・農化)②モデルゲルを用いたおいしさの感性表現である「クリーミー」の見える化 〇鈴木真人1、中村卓2(1明治大院農・農化、2明治大農・農化) 以上のように、順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、これまでに得られた『(イ)意識化→(ロ)単純モデル化→(ハ)見える化』のシステムを検証し、おいしさの感性表現を食品属性に見える化するシステムをブラッシュアップする。これまでの検証をふまえて、「濃厚」等にもこのシステムが適用できるか検討する。さらに、あまり食品の表現に使われないオノマトペを選び、そのイメージをおいしさの表現として具体的な構造と力学と香味成分に落とし込む。この感性的なおいしい食品のイメージを具体的な香味成分の放出・食品構造・力学特性に翻訳する『おいしさデザインへのアプローチ法』を確立する。
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