研究課題/領域番号 |
16K00830
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
宮岡 洋三 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (10134941)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 風味 / 食品摂取 / 反応時間 / 筋電図 / 検知 / 認知 / 自律神経活動 / 体性神経活動 |
研究実績の概要 |
本実験では、試料を被験者の臼歯間に挟ませ、咀嚼開始の指示後であれば適時に噛み始めさせる。昨年度に開発した自製のゼリー菓子(以下、ゼリー)には、ストロベリーなど5種類の果汁フレーバーを上限50μLで試料(2.1 mL/個)に添加した。最初に、果汁フレーバー添加試料の感覚特性を時系列官能評価法の一種であるtemporal dominance of sensations (TDS) 法にて調べた(摂取から30秒間)。使用したいずれのフレーバーについても、用いた評価項目の中で「甘味」と「フレーバー感」が一貫して統計的な有意水準を超えた。この結果は、ゼリーに含まれるショ糖と添加したフレーバーが原因と考えられた。次いで、試料テクスチャと検出/認知時間の関係について、以前に使用した市販グミ・キャンディ(以下、グミ)と自製ゼリーの硬さの違いを中心に調べた。グミの硬さ(平均値)が約800 kPa/m2であったのに対して、ゼリーの硬さは約200 kPa/m2と1/4ほどしかなかった。一方、グミによる平均検出時間が3.3秒であったのに対して、ゼリーでは2.1 秒とおよそ2/3に短縮した。認知時間についても、グミが7.5秒であったのに対して、ゼリーでは4.6秒と約6割に短縮した。これらの結果は、試料の硬さは風味の検出時間と認知時間の双方に大きく影響し、その原因は試料咀嚼による呈味・香気成分の混和・蒸散過程が主になるとの示唆を与えた。さらに、試料の摂取が自律神経活動に及ぼす影響について心拍数の変化で調べた。その結果、使用した3種の果汁フレーバーでは、種類と濃度に関係なく摂取後の心拍数は統計的に有意な増加を示した。この心拍数増加が風味の検知・認知による心理的な影響の結果なのか、あるいは単に検知・認知動作(ボタン押し)の結果なのかはまだ不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
咬筋筋電図の活動開始時点を計測起点とする風味の検知・認知時間の記録系はすでに確立されている。当該年度においては、これまでの市販試料から自作試料への変更という刺激系の確立に傾注した。順調に進んでいれば、この作業は初年度で完了する予定であったため、上記の進捗区分とした。ただ、自作試料の感覚特性をTDS法を使って詳細に調べられたのは大きな進捗と言える。また、注目する自律神経活動および体性神経活動の反応については、心拍数と顔面皮膚温度の変化は記録・解析できているものの、「まばたき」の変化は必ずしも十分に捉えられていない。
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今後の研究の推進方策 |
上記(「9. 研究実績の概要」を参照)にも記載した通り、自製の試料を用いて風味提供時の自律神経活動(心拍数変化)は調べ始めたが、まだ得られた変化のもつ意味は明らかになっていない。したがって、風味の検知・認知による心理的な影響の結果なのか、あるいは単に検知・認知動作(ボタン押し)の結果なのかを明確にする必要がある。併せて、風味提供による「まばたき」などの体性神経活動についても解明する必要がある。体性神経活動の変化は現在までに採取したデータの解析が中心となるものの、より相応しい指標によるデータ採取もおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の使用金額が、当初予想よりも少なかったため。
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