研究課題
本実験には寒天原料の自家製ゼリーを試料として使用し、規定量のショ糖とフレーバーを添加した(3種の果汁、3段階のフレーバー濃度)。試料の果汁風味を被験者が認知する過程における眼瞬(瞬き)間隔の変化に注目し、録画した動画の解析を進めた。被験者には咬筋表面筋電図用電極と耳朶脈波センサを装着し、試料であるゼリーを臼歯間に挟ませて咀嚼開始の指示後であれば適時に噛み始めさせた。咬筋筋電図等に併せて、試料咀嚼前後の状況を動画で記録した。予定していた動画の自動解析が装置の問題からできず、手動解析をおこなったために現時点でも全体の50%程度しか終了していない。眼瞬間隔の変化は各被験者の風味認知時点を基準として、その前後各5眼瞬の平均間隔を測定の上で統計的に比較した。風味認知時点は、予め通知した果汁風味がわかった瞬間に被験者の手元ボタンを押させて記録した。解析の終わった9名の若年成人被験者から得られた結果の概観は以下の通りである。風味認知時点前の眼瞬間隔が1.65±0.91秒(平均値±標準偏差)であったのに対して、同時点後では1.89±0.74秒と統計的に有意な差違を示した(P < 0.05、対応のあるt-検定)。現有データ数の関係から、試料の3種果汁間や3濃度段階間に差違があるのかなど詳細な解析は今後の課題である。なお、眼瞬間隔の標準偏差は被験者間で風味認知時点前・後ともに5倍前後異なっていた。すなわち、眼瞬間隔の変化には大きな個人差があった点は慎重に考慮する必要がある。果汁風味の認知前は認知後に比べて眼瞬間隔が有意に短くなる、すなわち眼瞬が増えるとわかった。この結果は、風味を認知する過程では、試料の咀嚼に伴う口中香が反射的に眼瞬を増やすとの可能性を示唆する。
3: やや遅れている
上記の「研究実績の概要」にも書いた通り、当初に予定していた眼瞬間隔の自動解析が装置の問題からできず、手動解析をおこなったために作業の遅れが生じた。本来は2018年度で終了予定の研究であったが、現時点でもデータ解析が全体の50%程度しか終了していない。そのため、やむを得ず期間を2019年度まで延長した。しかし、現在は手動解析のシステムも確立したので、今後は順調にデータが出揃うものと期待している。
本研究課題である「食品風味による体性・自律反応」の内、2018年度は体性反応である眼瞬を中心にデータ解析してきた。2019年度はそれを完了するとともに、自律反応についても最終的な取りまとめをおこなう。食品風味による心拍数の変化をこれまでは予備的な形で報告してきたが、風味を与えるフレーバーの種類や濃度等の要因を配した詳細な統計解析を実施し、どの要因が心拍数変化に影響したのかを確定する予定である。
当初の研究期間は2018年度をもって終了の予定であったが、2019年度まで期間が延長となった。これに伴ってデータ解析を継続するため、その作業補助に要する費用(アルバイト代)に助成金の相当部分を充てる予定である。また、助成金の一部は研究成果の発表(学会出張旅費、論文刊行費)にも充てる予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Perception
巻: 47 ページ: 851-9
10.1177/0301006618777940
Food and Nutrition Sciences
巻: 9 ページ: 676-82
10.4236/fns.2018.96051