スギ花粉暴露から交差抗原性によってトマトアレルギーは発症する。本研究ではスギ花粉暴露によるトマトアレルゲン感作、トマトアレルギーの診断、スギ皮下注射免疫療法によるスギ花粉抗原に対する反応について末梢血好塩基球活性化検査を利用して評価した。 スギ花粉曝露による抗原特異的IgE、末梢血好塩基球活性化への影響ではスギ抗原特異的IgE値のみが飛散曝露後に上昇したが、末梢血好塩基球活性化(Area under the Curve; AUC)、トマト抗原特異的IgE値には有意な変化はなかった。スギ飛散後にトマト抗原特異的IgE値が上昇した群と低下した群では、飛散前の末梢血好塩基球活性化は有意な差はなかった。 トマトアレルギー患者と感作のみの患者の検体評価では、症状の有無でトマト抗原特異的IgE値、末梢血好塩基球活性化には有意な差は見られなかった。 スギアレルゲンに対するスギ皮下注射免疫療法の長期免疫学的変化を検討した。スギ抗原特異的IgEは治療開始後17カ月以降有意に減少した。スギ抗原特異的IgG4は治療開始後5ヶ月以降有意に上昇した。スギ抗原刺激による末梢血好塩基球活性化は用量依存的に有意に低下した。末梢血好塩基球活性化(AUC)は5ヶ月以降に有意に低下した。臨床症状との相関が多く報告されている末梢血好塩基球活性化が早期から低下していることから、免疫学的にも治療後早期から変化があり、脱感作が起こっていることを示唆していた。抗原特異的IgEは17ヶ月後より有意に低下していた。このことは、早期に脱感作が誘導された後に、寛解に至るというアレルゲン免疫療法のこれまで考えられている免疫学的メカニズムがスギ花粉皮下注射免疫療法でも当てはまることを示唆し、交差抗原性があるトマトアレルゲンに対しても同様の経過をたどるかは今後の検討が必要となる。
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