研究課題/領域番号 |
16K00835
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
長野 隆男 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (20304660)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大豆 / 大豆イソフラボン / 大豆サポニン / アレルギー性接触皮膚炎 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
低分子の化学物質がアレルギー性の皮膚炎を起こすことが知られており,この皮膚炎はアレルギー性接触皮膚炎(ACD)と呼ばれる。マウスを用いた接触過敏症(CHS)動物実験系は,ACDのよいモデル動物実験系と考えられている。本年度は,CHS動物実験系を使用して,1)大豆及び大豆イソフラボン(SI)のCHS抑制効果,2)大豆サポニン(SS)のCHS抑制効果について検討をおこなった。 1)非CHS対照群,CHS対照群,大豆摂取CHS群,SI摂取CHS群の4群で実験を行った。ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)による耳介の腫れと耳介組織に浸潤した炎症細胞の数を測定したところ,CHS対照群と比較して大豆またはSI摂取CHS群で有意な低下が観察された。大豆とSI摂取群でCcl24遺伝子とCXCL24の発現で有意な低下が観察された。以上の結果から,大豆及びSIの摂取は,好酸球を動員するCXCL24の遺伝子とタンパク質の発現を抑制することからCHSが緩和されると考えられた。 2)非CHS群,CHS対照群,低SS摂取CHS群,高SS摂取CHS群の4群で実験を行った。DNFBによる耳介の腫れと耳介組織に浸潤した炎症細胞の数を測定したところ,CHS対照群と比較して低SS摂取群で抑制が観察された。しかしながら,高SS摂取群ではそれらの抑制効果は低下した。サイトカイン解析の結果,低SS摂取群でCXCL2とTREM-1が抑制されていた。腸内細菌叢のNGSデータを解析した結果,低SS摂取CHS群は非CHS群と同じグループに分類された。一方,高SS摂取CHS群は非CHS群とCHS対照群の両方のグループに分類された。以上の結果から,SS摂取は低用量で腸内細菌叢を改善し,好中球を動員するCXCL2と炎症性ケモカインであるTREM-1が耳介組織で抑制されことからCHSが緩和されると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,植物性食品及び発酵食品の接触過敏症抑制作用と腸内菌叢に与える効果の解明である。現在までの研究から,植物性食品として大豆,大豆イソフラボン,大豆サポニンの接触過敏症抑制作用を明らかにすることができた。さらに,大豆サポニンの接触過敏症抑制作用に腸内菌叢が関与している結果を得ることができた。学術論文として欧文誌に2報掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
植物性食品として大豆の接触過敏症(CHS)抑制作用を示すことができたことから,腸内菌叢の関与を明らかにする検討,発酵食品として麦甘酒の検討を計画している。1)抗生剤を投与して腸内菌叢を変化させたときのCHS抑制作用について検討をおこなう。2)腸内細菌叢を同定する方法として,次世代シークエンサーで16S rRNA遺伝子を解析を行う。3)発酵食品として,麦甘酒の研究を開始する。日本人の食物繊維摂取不足に対応した研究とする。4)研究計画ではヒト試験による植物性食品及び発酵食品のCHS抑制効果を挙げている。そこで,尿を試料としたメタボローム解析の研究を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者である長野隆男は,川崎医療福祉大学から石川県立大学に異動となったため,使用額を計画通り執行することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい職場である石川県立大学において研究課題を行うにために不足している物品の購入を計画している。具体的には、遠心機(410,400円)が必要であることから、その購入に276,836円を充てる。
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