研究課題/領域番号 |
16K00836
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研究機関 | 東亜大学 |
研究代表者 |
廣田 幸子 東亜大学, 医療学部, 教授 (00312140)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アズキ / 澱粉消化抑制 / ヴィグナシアニジン / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
アズキ種子フラボノイド画分に含まれているタキシフォリン、ケルセチンおよびヴィグナシアニジン(シアニジン-カテキン複合体)は、白飯澱粉の消化を抑制できること、また、その抑制効果は、タキシフォリン<<ケルセチン<ヴィグナシアニジンの順であることを明らかにした。さらに、この三者の疎水性も、タキシフォリン<<ケルセチン<ヴィグナシアニジンで大きくなることから、アズキフラボノイドによる澱粉消化抑制効果は、その疎水性に依存すると推定した。 食物は胃を通過して腸に達する。そのため食物成分は胃腔で口腔由来の亜硝酸と反応できる。そこで、亜硝酸処理をしたアズキのフラボノイド画分の澱粉消化抑制について調べた。その結果、ケルセチンとヴィグナシアニジンによる澱粉消化の抑制効果は、亜硝酸処理によって低下した。さらに、ヴィグナシアニジンと亜硝酸との反応産物も、澱粉消化の抑制に関与できることを明らかにした。次に、精白米にアズキ種子を加えて炊飯したアズキ飯の飯を用いた実験を行った。このアズキ飯の飯の色は保温保存に伴って変化した。この変化に伴ってアズキ飯の飯に含まれるルチンとケルセチンの含有量の変化は小さかったが、ヴィグナシアニジンは大きく減少した。この色の変化は、ヴィグナシアニジンの酸化によるものと予測した。 次に、米の加工品である上新粉を用いて、上新粉澱粉の消化に対するアズキ抽出物の影響を調べた。アズキ抽出物は、上新粉澱粉の消化を抑制した。その抑制は、アズキ抽出物と澱粉粒子から遊離した澱粉との結合によるものであることが示唆された。さらにアズキ抽出物中のケルセチンとヴィグナシアニジンは、澱粉粒子の澱粉の遊離を抑え、遊離された澱粉の分解を抑制した。また、アズキ抽出物中には脂肪酸も含まれている。脂肪酸は、アミロースの遊離と遊離したアミロースの分解を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料として白飯を用いて研究を進めてきたが、白飯の複雑な構造を均質化するのに困難を要したため、米の加工品である上新粉を用いて、上新粉澱粉の消化に対するアズキ抽出物の影響を調べた。アズキ抽出物は、上新粉澱粉の消化を抑制した。そして、その抑制には、アズキ抽出物による澱粉粒子の遊離と遊離された澱粉の結合が示唆された。これらの実験データは、論文としてまとめている。また、平成29年度に液体クロマトグラフ用PDA検出器とポンプを購入させて頂いた。この購入のおかげで、移動相の濃度勾配が出来るようになり、分析が容易になり、なおかつ新規物質の検出につながった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究で、精白米にアズキ種子を加えて炊飯したアズキ飯の飯の色は、保温保存に伴って変化した。この変化に伴ってヴィグナシアニジンの含有量は減少した。このことから保温後のアズキ飯の飯の変化は、ヴィグナシアニジンの酸化によるもとを予測した。 まず、平成30年度は、ヴィグナシアニジンの酸化産物を同定する。 さらに、平成29年度の研究で、米粉澱粉の消化に対するアズキ抽出液中のアズキフラボノイドならびに脂肪酸による抑制が確認できた。そこで、上新粉を料理で用いる際、上新粉は一度加熱した後、混捏し、さらに加熱する。たとえば柏餅などは上新粉澱粉の生地を二度加熱し饅頭に利用する。二度加熱することで澱粉の形態に変化が起こる可能性がある。平成30年度は、二度加熱によるアズキ抽出液による米粉澱粉消化に対する影響も調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に購入させて頂いた液体クロマトグラフ用PDA検出器とポンプが安く購入できたため、次年度に予算の繰り越しが生じた。繰り越した予算は、糊化澱粉の上精と沈殿に分けるための小型遠心機の購入を計画している。
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