研究課題/領域番号 |
16K00838
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
太田 尚子 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00203795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 混合タンパク質ゲル / 混合タンパク質フィルム / 超音波分光分析 / 顕微鏡観察 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、加熱凝固性タンパク質に対して、熱に安定なカゼインナトリウムを添加し、その混合タンパク質ゲルの形成機構とフィルム物性について調べ、その成果を日本食品科学誌(vol. 65(11) 508-517 (2018))に報告した。その中で、一般に可塑剤として使用されることの多いグリセロールの一部を共存する加熱凝固性タンパク質に対してシャペロンとして作用するカゼインに置換した際、形成されたフィルムは無添加の単独タンパク質フィルムに比べ、伸展性に加えて引っ張り強度も増加していることを述べた。更に、この傾向は加熱凝固性タンパク質の種類によっても異なり、乳清タンパク質や大豆グロブリンを使用した際に観察された現象であった。これは逆可塑化現象が起きている可能性が示唆される。また、タンパク質を懸濁する為に使用する溶媒の種類によっても発現する物性は顕著に異なっており、これらのグロブリンではフィルム調製には、まずタンパク質を水に分散させ、加熱誘導ゲルを形成させその後水分を乾燥により減少させることが適していることを示唆した。即ち、エタノールなどの有機溶媒を用いた際には容易に溶媒の蒸発がなされ、フィルム化に要するステップが簡単となるものの、その構造が粗く脆い物性となった。 その後の研究において加熱処理に替えて常温で酸性化することによりゲル状凝集体を形成するカゼインを主成分とした混合たんぱく質系に研究を進展させている。この酸性化ゲルは豆腐の凝固剤として利用されているグルコノデルタラクトンを使用する事とし、温和にpHを低下させその際の共存タンパク質との相互作用を詳細に研究する事を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した様に、カゼインナトリウム添加混合タンパク質のゲル化とそのフィルム形成性について研究を遂行している。現在、その際に与える刺激を当初の手法である加熱処理に加えて、酸性化処理にも着手している。現時点では、超音波分光分析法などで観察されるスペクトル変化は、これまでの加熱処理で観察される変化に比べ、およそ1/10程度と極めて小さい事が判ってきており、その点でより慎重な解析が求められている。以上のような経緯でおおむね順調と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
継続して、常温下での超音波分光分析を行うが、ここで観察される現象をレオログラフゾルによる動的粘弾性測定、共焦点顕微鏡観察および赤外分光分析などの手法を加えてより多面的に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、使用している装置の不具合が連続して生じた。現在出来る範囲の応急処置を行い研究継続しているが、今後もその修理などに経費が必要となる見込みである。また、研究補助を依頼していたが当該補助者の事情などにより継続が困難となった。その為、次年度使用額が発生した。
当該研究の遂行に必要な部品、調整費などに充てる予定。
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