本研究では、抗酸化作用を持つ低吸収性の機能性食品成分に焦点を当て、それらの消化管における吸収機構に関する検討、さらに乳剤化などの製剤開発、ならびにトランスポーターを利用した吸収改善のための検討を行うことで、その成分の吸収動態特性を考慮した吸収改善理論を構築することを目的として、種々検討を進めた。いくつか検討した物質の中で、ルテインに関しては、吸収改善のため、乳剤組成を変更するなどいくつか検討したものの、明確に血漿中濃度の上昇は確認されなかった。しかし、組織中濃度は増大していたことから、なんからの経路で体内へ吸収されていると考え、リンパ液を採取し、ルテインの濃度を測定したところ、ルテインはリンパ液に移行していることが示された。自己乳化製剤や個体分散体をラットへ投与し、リンパ液中濃度、一定時間までの累積移行量を算出したが、いずれの場合も原末投与時と比較して有意に増大しており、ルテインの吸収の評価にはリンパ液が有用であることが示された。その一方、コエンザイムQ10(CoQ10)やクルクミンに関しては、新規界面活性剤素材であるオキサ酸を用いて、乳剤を調製し、血漿中濃度を測定したところ、過去に我々が調製していた乳剤よりも、有意に高い吸収が認められた。これらの物質はいずれも脂溶性が高い物質である。我々の過去の報告より、これらの物質の吸収にコレステロールトランスポーターNPC1L1(Niemann- Pick C1-Like 1)が関与しているのではないかと考え、NPC1L1の発現系を構築した。直近で、これらを用いてNPC1L1の関与について検討する。また、今後は、トランスポーターの関与を検討しつつ、寄与率が大きい場合などはその特性を利用した吸収改善法について検討していく予定である。
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