研究課題
本研究の目的は、アテローム性動脈硬化症に関与する生体酸化ストレスに対するハマナス花弁ポリフェノールの効果をin vitroおよびin vivoで明らかにすることである。アテローム性動脈硬化症の発症原因として、動脈内皮細胞下で酸化された低密度タンパク質(LDL)が免疫細胞であるマクロファージに貪食されることが示唆されている。そこで平成30年度は、ハマナス花弁ポリフェノールによるマクロファージの酸化LDL貪食抑制作用についてヒト単球由来細胞株(THP-1)を用いて調べた。また、アテローム性動脈硬化症を発症する実験動物(ApoE欠損マウス)を用い、ハマナス花弁ポリフェノールの摂食効果を検討した。1)超遠心法で調製したヒトLDLを平成28年度および平成29年度で確立した実験条件に基づき、ペルオキシナイトライトとともに37℃、4時間インキュベートし、酸化LDLを調製した。THP-1を培養し、phorbol 12-myristate 13-acetateで72時間処理することによってマクロファージへ分化させた。細胞を酸化LDLとともに90分間インキュベートした後、蛍光プローブを加えて細胞内に取り込まれた過酸化脂質と反応させた。細胞の蛍光強度を蛍光顕微鏡で撮影し、画像処理によって酸化LDLの貪食量を定量化した。その結果、ハマナス花弁ポリフェノールで処理したLDLの貪食量が低くなる傾向が認められた。2)ApoE欠損マウス(4週齢雄)にコレステロール0.15%およびハマナス花弁抽出物0.5%を含む飼料を6週間摂食させ、LDL画分中の過酸化脂質レベルをHPLCによって定量した。その結果、ハマナス花弁抽出物群の血清チオバルビツール酸反応性物質濃度が対照群に比べて低くなる傾向が認められた。以上の細胞実験および動物実験の結果から、ハマナス花弁ポリフェノールは生体酸化ストレスを抑制することで、アテローム性動脈硬化症を予防する可能性が示唆された。
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