研究課題/領域番号 |
16K00845
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
長友 克広 弘前大学, 医学研究科, 助教 (30542568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸電図計測 / 便性状解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒト腸内細菌の活動を生きたまま評価することにより宿主健康度を推定できるだろうかという試みである。計測項目は以下の3項目を用いる。(1)腸内細菌の活動を生菌死菌区別して評価、(2)腸内細菌と消化管運動の双方の活動結果としての糞便の性状を評価、(3)宿主消化管運動を腸電図解析または腸音解析により非侵襲的に評価。このうち、今年度は(3)に必要となる電気生理関連備品に予算の大部分を割いたため、(1)に必須となる蛍光試薬を購入する費用を捻出することができなかった。また予定していた腸内細菌層の変動解析について、排便から集菌を行い実験に供するまでに時間を要するため偏性嫌気性菌の変動を調べる目的としていたが、問題が生じた。実際の糞便からDNAを抽出する行程と検体を採集するタイミングがバッティングしてしまうため、5分程度時間をおいて採集・抽出することが難しくなる。そこで、まず安価なPCR法で最適な条件を割り出すこととした。腸電図計測では、当初、記録できる電位幅の上限と下限を超えてしまい長時間安定して電位記録を実施することができなかったため、最適な条件を割り出すまでに時間を要した。現在は解決し、2時間以上安定して記録できるようになった。現状、単一箇所の記録では情報量が少ないため、腸音記録による腸管運動の評価も併せて検討を行っている。いずれにしても、腸電図と聴音機録により評価できるのか、また立体的な多点記録に変更し、腹部活動を捉える必要があるのか、今後の課題となっている。便性状解析については、課題が山積しており、解析方法の改良などが必要な状況である。例えば、単一便の部位毎に異なる硬度をどのように評価するのか、ある程度基準を作る必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化管活動の指標となる腸電図記録に関しては長時間記録ができるようになった。糞便性状に関しては、何らかの基準を設ける必要がある。本研究の2本柱について、多少のトラブルはあるが改善や解決を行って実施できている。しかし、3本目の柱である本研究の中心となる腸内細菌の機能評価が研究費不足により試薬購入ができず実施できていない。また予定していた腸内細菌叢の解析は、条件検討に際して解析サンプル数が増加してしまい高額となるため、まず安価なPCR法で条件を絞り込むこととし、初年度の実験計画を少々変更した。
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今後の研究の推進方策 |
糞便から集菌し、機能解析を行うまでの時間経過に伴う菌叢解析の条件検討を速やかに行うと共に、菌叢解析を行い、28年度購入できなかった蛍光試薬を用いて機能解析を進める。また腸電図に関しては、現状の単一箇所からの記録で十分な解析ができるのか判断が難しいので、腸音解析を併せて方向性を決定したい。便性状については計測基準を検討する。 本研究では申請者本人を被検者としており、滅多に具合が悪くなることがないため、健康状態が悪くなった場合に腸内細菌はどのような状態を示すのか興味がある。また毎食同じ食事を摂っているわけではないので、食事内容の変動が結果に影響するのか、それとも健康状態の影響が結果に表れているのか、この判断は難しいと考えられる。そこで、当研究室ではがんモデル動物を飼養しているので、同じ餌を摂取している動物において、発癌物質によって引き起こされるがん形成によって、どのような変化が腸内細菌に現れるのか、調べる価値があるのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金が発生したのは、①本研究テーマの基礎データを含む論文の投稿を予定していたが別の論文に取りかかっていたため年度内に仕上げられず次年度に延期した、②当初計画していた菌叢解析の条件検討が必要となり、実験方法を変更し菌叢解析自体を一旦保留したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
腸内細菌の機能評価をするための蛍光試薬購入費、および、腸内細菌叢解析に充てる。論文については、29年度に投稿予定である。
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