研究実績の概要 |
本研究は、ヒト腸内細菌の活動を生きたまま評価することにより宿主健康度の推定を行うものである。現在検討している項目は、(1)腸内細菌のエネルギー要求量、 (2)糞便性状、 (3)宿主消化管運動の電気生理的解析である。(1)の実験プロトコルに関することで、H28年度に実施予定だった糞便から集菌し実験に供するまでの時間検討(集菌直後から最大6時間)をPCR法で検討した。Bacterial 16S rDNAをすべて検出する仕様だったため、腸内細菌の生死によるPCR産物の濃度変動をうまく捉えることができず、当初計画していたように細菌叢解析を行った。解析結果から、現在実施している実験プロトコルの集菌後30分以内であれば、集菌操作によらず、採便直後の菌叢と比較して大幅な変動がないことを確認した。また、腸内細菌のエネルギー要求量の評価方法に関して、より簡便な方法を模索している中で、使用している緩衝液組成により、蛍光試薬の取り込み率に違いが生じている可能性を見出した。現在、Taoら(Biochemistry, 55, 2578-2589, 2016)の報告を参考に検討を進めている。さらに、申請時当初計画していなかったが、消化管機能の破綻と腸内細菌のエネルギー要求量を比較するために胃がんモデルマウスを利用開始した。本マウスは遺伝子改変マウスであり、3種類の遺伝子を欠損すると生後50週で80%程度の胃がん発症率を有する。食餌や飼育環境が野生型マウスと常に同じであるため、両マウスの腸内細菌を用いることで、健常時と健康状態が破綻した時の腸内細菌のエネルギー要求量の比較を簡便に行えるものと考え、実施している。胃がんマウス作製に時間を要するため、現在までに例数は少ないが野生型と比較検討を行っている。本研究を円滑に推進するため、経費にマウス飼養料を計上している。
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